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たたりのMOCOのレビュー・感想・評価

たたり(1963年製作の映画)
3.5
「何かいる」
「見えないわ」
「感じない?」
「寒いけど」
「動いているわ」
「風か何かよ・・・
 じゃ誰? 何?」
「家よ 生きている」
「あなた(エレノア)よ
 家があなたを呼んでるわ」

 1999年興行的には成功しながらも酷評されたホラー映画 『ホーンティング』と同じ、山荘を舞台に四人の男女が体験する恐ろしい霊的現象を描いたシャーリイ・ジャクスンの『山荘綺談』を基に映画化された1963年のロバート・ワイズ監督のモノクロ作品です。
「ホーンティングは『たたり』のリメークではない」という説があるようですが『たたり』を観れば影響を受けているのは明白です。
 
 1999年8,000万ドルの制作費を使い、高度なCGを駆使してカーテンやシーツの布の動きで子供達の霊の存在を表現して驚かせた『ホーンティング』に対して1963年の『たたり』は僅か110万ドルの制作費であったことと、制作当時の映像表現が乏しいためか幽霊が映像として表現されることは一切ありません。「何か?」の存在は音の表現をメインに行われ、姿を見せないことで恐怖心を煽る作りになっているのですが、今日の音響表現に比べるといささかお粗末に感じてしまいます。


 90年前ヒュー・クレーンは片田舎の丘に屋敷を建てます。婦人と幼い娘アビゲールが引っ越してくるのですが、その敷地に入ったとき馬車を引く馬が暴走し馬車は大木に激突し婦人は死体となって屋敷に運ばれることになってしまいます。
 暫くしてヒュー・クレーンは再婚をするのですが新しい妻は階段から原因不明の転落をして命を落としたことから、たたりのある幽霊屋敷の噂が広まり、やがてヒュー・クレーンもイギリス旅行中に事故で水死します。
 アビゲールは何故か大人になっても保育室で生活し、老婆になり寝たきりになり、村の娘を雇い身の回り世話をさせるのですが、娘が手を抜いていたために命を落としてしまいます。
 その屋敷はこの村娘が継いだのですが、やがて娘は精神がおかしくなり屋敷で自殺してしまいます。その後娘の遠い親戚にあたるサナーソン婦人がその屋敷を引き継ぎます。

 マークウェイ博士はサナーソン婦人から心霊現象の研究のために幽霊屋敷と噂される『丘の家』を借りることにします。
 マークウェイ博士は、10才の時にボルターガイスト経験を持つエレノア・ラースンと鋭いESP能力を持つセオドーラを雇います。
 他に屋敷に招待されたのは将来屋敷を継ぐサナーソン婦人の甥のルーク・サナーソン。
 4人は3日も借り手がつかなかった幽霊屋敷に泊まり込み、超自然的な事例の実態調査を始めるのですが・・・。

 ホラーでありながら怖くない『ホーンティング』は「おかえりエレノア」という子供の幽霊の言葉が印象的で、エレノアが屋敷に招かれるべくして引き寄せられ実験に参加する理由などは『ホーンティング』の方がはっきりしていたような気がします。『ホーンティング』はエレノアにとってハッピーエンドで終わるのですが、意外なエンディングが『たたり』では待っています。

 幽霊を実像化しない手法を使った『たたり』はスティーブン・キングに高く評価されたのですが今は容易に観る事ができなくなってしまった作品です。
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