おとうふ

人生はビギナーズのおとうふのレビュー・感想・評価

人生はビギナーズ(2010年製作の映画)
3.9
白黒ハッキリ付けたくなるこの世の中ですが、「淡い」部分を巧妙に繊細に描いた映画だと思いました。
ドラマティックと真逆のことをスクリーンに映すって、おもしろいよね。
1周回ってドラマティック?
監督の内向性がかなり感じられた。
楽しいと難しいのせめぎ合い、達成したけどなんかもう疲れた、手に入れた幸せが思ったより幸せじゃない
現実ってそう、私も悲しい結末から考えてしまう癖があるから、このなんとも言えないやりきれなさになんだこの親近感はと観ていて不思議な気持ちでした
女性が着ていた水色の綺麗なガウンも高級ではないけど審美眼を持って選んだという感じがして、彼女の繊細さやあどけなさが伺えました。
場面の切り替えも、ストーリーの流れも、ところどころ味にムラがある手作りのお菓子みたいな、ここは味がすごい香ばしくて甘くて美味しい、かと思えば次のひとくちは粉っぽくてでもそのバランスが案外良い、みたいな。多分それが正解ていうか、それでいいんだ。
そう、人生ってこれでいいんだよなって観てて思いました。
若き日の母親と父親のやりとり、ゲイである彼に惚れたお母さんは「私が治してあげる」的なことを言うんだよね。(もちろん治すものではないが)それに対してお父さんは「神様、何でも努力します」そう、思うんだよね。戦争があってゲイへの理解もない時代に、その言葉は本当に救いで、強い結びつきを感じたんだろうなというのがよく感じとれた。
一方割に恵まれた時代に生まれた2人は掴みどころが無い様子だった。何もない、ドラマは自分たちで作り出さない限り昔みたいな運命的な結びつきなんて感じづらいんだろうな。なんかその虚しさもわかる、2人が一緒にいようとすることを力無く諦める方向に割と簡単に揺れるのもわかる。でも一緒に居たいんだよね。それはなんだか幼気な感情で胸がギュってなった。
オリバーとアンディのやり取りもハッキリとはしないじゃない、僕がゲイだから関わりたくないんだよねと言うアンディの意見にそうではないことを伝えるもやや言葉足らずで心許ない感じがした。でもそれでいいんだよね。関係に正解があるわけでもなく、正解がないことが正解、ベターであると、それが良かった。
何より人生はビギナーズであるから。


いやなにあのしなびたジャックラッセル!
絶妙すぎる笑
ずーっと釘付けよ!笑
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