喜連川風連

イリュージョニストの喜連川風連のレビュー・感想・評価

イリュージョニスト(2010年製作の映画)
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絵で語る。これぞ映画。なんでも説明しない。余白があって大変いい。

「あいつはもう終わりだ」とセリフで語らず、閑古鳥が鳴く客席をしきりに映す。

黒澤明の「まあだだよ」のように人生最後に撮るような雰囲気だと思ったら、ジャック・タチが残した最後の脚本だったんですね。

タチ自身、映画監督になる前はパントマイムを志していたようで、自伝的でもあった。

作品全体から漂う「老兵は死なず、単に消え去るのみ」の精神。

エディンバラ、ケルト音楽、フィッシュ&チップス、紳士文化。英国色強め。

2Dの美しい構図から、ペン画の繊細な線で書かれた背景が立体的に浮かび上がり美しい。特にラストの本のページがめくれてる影が鳥になるシーンが白眉。

台頭してくるロックミュージックの波に古典的な娯楽が次々と滅んでいく。

ロリータや痴人の愛のように、おじさんが少女にのめりこんでいく映画かと思いきや、人生の最終幕の去り際を見たような趣ある映画でした。
喜連川風連

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