不在

イリュージョニストの不在のレビュー・感想・評価

イリュージョニスト(2010年製作の映画)
4.8
まずは愛、言葉は二の次だ。
そんなタチの言葉が聞こえてきそうだ。
これまでのユロという存在は、どことなく浮世離れしていて生活感がなく、良い意味で人間らしくなかったから、まだどこかで生きているような気がしていた。
しかし本作は主人公こそユロではないものの、ジャック・タチという存在をありありと示してくる。
寝て食べて、仕事もするし、落ち込んだりもする。
アリスという娘の存在が、タチを人間にしたのだ。
だからこそ我々は彼の不在を痛感する。

タチは遺作である『パラード』のラストで、次の世代へとバトンを託したが、それはしっかりと受け継がれている。
ジャック・タチ亡き今、世界は少し退屈になってしまったが、彼がいなければもっと退屈だったはずだ。
不在

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