一人旅

犯罪河岸の一人旅のレビュー・感想・評価

犯罪河岸(1947年製作の映画)
4.0
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督作。

映画会社社長が殺された事件に巻き込まれていく人々を描いたドラマ。
殺人事件が解決されるまでの過程が描かれるが、決してサスペンス的ではない。むしろ、殺人事件を通じて夫婦間の愛情や女同士の友情を映し出している。事件は一向に解決せず混迷を極めていくが、その原因となっているのは人が人を思う気持ちだ。事件容疑者はそれぞれ人を守るために嘘をつき、行動し、犠牲になる。嘘、誤解、嫉妬、友情、愛が複雑に絡み合いながら展開していく物語が絶妙だ。事件に関わりがあるとはいえ、本質的に悪い人間が一人も存在しないことも特徴で、本作のテーマは人間同士の真心にある。事件の容疑者たちは取り返しのつかない深刻な事態に徐々に追い詰められてしまうのだが、そうした状況の中、元を辿ると現れるのが人間同士の嘘偽りのない純粋な真心なのだ。表面上の嘘と心の根底に隠された真心が交錯する物語に最後まで目が離せない。
また、容疑者たちと事件を捜査する刑事の駆け引きも見応えがあり、意外性のある結末が温かく晴れやかな気持ちにさせる。
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