Omizu

犯罪河岸のOmizuのレビュー・感想・評価

犯罪河岸(1947年製作の映画)
3.3
【第8回ヴェネツィア国際映画祭 監督賞】
『恐怖の報酬』などのアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督作品。ナチスドイツ占領下のフランスでつくった『密告』が対独協力を疑われ沈黙を続けていたクルーゾーがジャン・コクトーらの支援を受けて映画界に復帰した作品。スタニスラス=アンドレ・ステーマンの同名小説が原作。

パリの下町を舞台に、年下の若い流行歌手である妻の浮気性に悩む夫が巻き込まれた殺人事件の顛末を描くサスペンス。

事件の真相自体は早い段階で明らかになるものの、そこから興味を持続させて最後まで引っ張るのは流石の手腕。ただ、歌手ジェニー、その夫モーリス、モーリスの幼馴染ドラ、刑事アントワーヌの四人を中心にしているため、イマイチ焦点が定まらない印象があった。

事件の真相は分かっているため、「誰が犯人?」というサスペンスはないし、アントワーヌ刑事自体にもそこまで深入りしないので、もう観客が知っていることをこねくり回されても…とは感じた。

しかし画面づくりの美しさというのは特筆すべきか。ブリニョンが殺されているシーン、ジェニーが歌うシーン、ドラが刑事と何か絆を発見するシーンは印象に残っている。特にドラがアントワーヌに「君と僕には通じるものがある」と言われたときに窓の外に降る雪の美しさ。これは忘れられない。

クルーゾーってこんなもの?とは思ったけど悪くはない。他の作品観たら考えが変わるのかな。まあまあ。
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