てろおか

ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃のてろおかのレビュー・感想・評価

5.0

1作目を除けば間違いなく
自分のなかのゴジラ観を確立してくれた
作品であり、ゴジラ映画とは何かと
聞かれた時に人にオススメするとしたら
間違いなく一番に挙げるであろう作品です

それくらいとても思い入れのある
大好きな映画です

「ゴジラ」は戦争、核、災害、環境問題など
世相に応じた「危機 災厄」の
メタファーとして「日本」に現れる
という怪獣だと 自分は認識しているのですが
本作のゴジラは1作目と同じ
水爆大怪獣としてのど直球なまでに
「戦争」「核」
しかも1作目の頃より
明らかにその度合いを強めた存在として
日本に現れます

そして現れる日本が
「危機」の全面に立つべき防衛軍はじめ
国民のほとんどが先の戦争や
世界唯一の被爆国であることを
忘れ去ってしまったような「平和国家」に
なっている点も非常に良いです

特に防衛軍に関しては
一作目で民間の科学者が
その命を賭して
オキシジェンデストロイヤーという
特殊兵器でゴジラを葬ったという
史実ではなく
「創設当初の自分達がゴジラを倒したのだ」という
歴史修正をおこなっているという
とても歪な軍事組織であるというのも
良くできています

戦争、核実験という過ちを
起こした人類に警鐘を鳴らすゴジラと
いう存在を、「唯一の実戦経験 勝利体験」
という組織の喧伝に利用しているという
平和ボケぶり
その創設思想の歪さと
ゴジラと対峙すべき存在のあり方として
東宝特撮の防衛組織で一番好きな存在ですね

そんな仮初の平和国家 日本に
警鐘を鳴らすべく
第五福竜丸で有名な焼津港に
再び現れたゴジラ

「まさかあれほどの災厄 悲劇を忘れていないだろうな?」

とでも言わんばかりに
歴代シリーズでも屈指の破壊と殺戮を行います

特に放射熱線に関しては
一発一発が核兵器並みの威力で
直撃した地域にはキノコ雲が現れるという
徹底ぶり 製作陣の水爆大怪獣という
存在へのリスペクトが感じられてとても善きです

そして傲慢を体現する防衛軍は
一作目同様 いや驕りの分だけ
それ以上に完膚なきまでに
叩き潰されます
本作の要撃司令官 三雲中将は
まさにこの防衛軍という組織の歪さを
その身で現している人物で
創設当初とは比べ物にならない火力を
有している→だから勝てる という
幻想に囚われ現実を直視できない人物です

凄く好きなシーンの一つが
防衛軍とゴジラの初の実戦
要撃戦闘機が爆撃攻撃をしかけますが
当然ゴジラには通用しません
現場のパイロットはそこで勘づきます
「まともにやって勝てる相手ではない」
しかし幻想の体現者 三雲中将は
この期に及んで着弾角度を変えれば
なんとかなるという幻想にしがみついています

パイロットは「角度の問題じゃない..」
と幻想から解き放たれ 真っ向から現実を直視します
しかしこの瞬間にゴジラの放つ熱線によって
命を失ってしまうのです

太平洋戦争という現実を直視できない
ことによって幾つもの悲劇が起きた
過ち、そしてその怨念の集合体たる
ゴジラに対峙する際に その
先の大戦の過ちを繰り返しているとは
なんという因果なのでしょうか

このような歪な組織に
ゴジラ対処ができるはずがなく
結局本作においても上手く終息させるのは
幼少時以来ゴジラの恐怖を片時も
忘れたことのない主人公 立花准将であり
彼に感化され 現実を直視できるようになった
一部の防衛軍でありました

そしてクライマックス
ゴジラの心臓がなおも動き続けているシーン
半世紀ぶりに災厄を経験し
歪な構造を完全に破壊し尽くされた
平和国家 日本は
あまりに遅くはありますが過ちを認め
再び現実を直視して歩きだすチャンスでは
ありますが、また同じことを繰り返すのなら
ゴジラは何度でもやってくるぞ と
なお警鐘を鳴らし続けるという
ことを台詞ではなくそのワンシーンのみで
表現するという
とても良くできた終わり方をしています

人それぞれゴジラ映画の捉え方は
ありますが、自分の中では本作ほど
真っ正面にゴジラのテーマ性に
向かい合った作品を知りません

間違いなく本作こそが
第1作目の正当な続編であり
この世界観の話の続きが描かれる
=過ちを再び繰り返す ことがないよう
本作で完結させようという意図すら
見える、とても良くできた映画です
(実際に製作陣は本作でシリーズを終わらせようとしていたとか)

新山千春さんのかわいい(?)演技とか
怪獣バトルとか 気になる人も
おられるとは思いますが
もちろんそこも楽しみつつ
ゴジラという存在の意味と
日本に現れる意味というものを
考えるきっかけになってくれれば
いちゴジラファンとしてこれほど
嬉しいことはありません

是非 ご鑑賞下さい
てろおか

てろおか