継

カラマリ・ユニオンの継のレビュー・感想・評価

カラマリ・ユニオン(1985年製作の映画)
4.0
(暗い下水路を這い上がり) マンホールの重い蓋をこじ開けて陽の光を浴びる.
違うシーンでは,
唐突にスッ転んで登場するも, 前回り受け身➰をキメて何事も無かったように走り出す...
ペロンパー演じるフランクの2シーン↑が大好きで「何?今の(´^ω^)」って笑ってしまうんだけど, ウケ狙いと思わせてその実 「此処ではない何処か」 へ向かって躓(つまず)きながら突進するストーリーのテーマを象徴してるようにも思える.

色を排して, 台詞を削って, 感情を殺して... そうして想像させるサングラス😎の下の表情, スピリット.

初めて観ると「何コレ?」となるカウリスマキの映画。けれど何度か観るとシンプルな作りの此処彼処(そこかしこ)にその面白さや言わんとすることが見えてきます。
独特なユーモアの感覚には諦めや皮肉から来るうら寂しさがなくて、根底にあるのはきっと「怒り」なんだろうなと観る度に思います。

この人はクレイジーケンバンド等, 日本の楽曲を作品に用いる事があるけれど、
“行くあてはないけど 此処には居たくない, イライラしてくるぜ あの街ときたら” と本作のフランク達を代弁する様に歌う日本のロックバンドは知らなかったようで。
“…幸せになるのさ” と続くこの曲は、実際別の映画に捧げられたものだけれど今作にも相応しい気がする。

置いてきぼりを喰らった心情を唄う “stand by me” からビリー・ホリデイ “You're my thrill” まで流す脈絡の無いアメリカンな選曲センス、中でもS&Gじゃなくチャック・ベリーのrock'n rollな “Maybelline (メイベリン)” で夜のヘルシンキをタンデム🛵で流すシーンが好きでした。

フランク達が焦がれた理想とは 異なる現実を晒す街, エイラ.
『レニングラード~』の原点で, いつものようにワンコU^ェ^Uが出て来て,『タチアナ』のように対岸のエストニアを目指し, 『真夜中の虹』よろしく舟へ乗る.
フィンランド人は歴史的にスウェーデンやロシアに複雑な国民感情を抱いている方が多いらしく, 陸続きで行ける隣国じゃなくわざわざ海を渡るのには, ドラマ性以外にもしかしたらデリケートな思いがあるのかな... ,とか考えてフィンランドの地形を見たら, 何だか猟銃を背負ってスウェーデンにケツ向けてる横顔の様に見えなくもなくて(笑).

此処ではなく, スウェーデンでもロシアでもないww, 何処かを目指して... だが, それには希望より苦難が待ってる事を予見させ, それでも前のめりに進むしかないフランクへ注ぐ, ポジティブな視線.
絵空事な話にしない, 美男も美女も出てこないカウリスマキ映画.
“見た目はダメでもハートがあればそれだけでラッキー, 生まれてきた甲斐があったってモンさ” …やっぱり相応しいぜ, ベンジー。
継