カルダモン

王と鳥のカルダモンのレビュー・感想・評価

王と鳥(1980年製作の映画)
4.5
抑圧からの解放。城という籠の中から放たれる人や鳥や動物たち。

傍若無人で醜い王様シャルル16世が統べる城塞都市。ある夜、王室に掛けられた二枚の絵から羊飼いの娘と煙突掃除の青年が抜け出した。互いに思いを寄せる二人は城の窓から外へ飛び出すことを画策するものの、同じく肖像画から飛び出した王様に恋路を邪魔されてしまう。

ぬるぬる動くアニメーションの気持ちよさや極端なパースで構成されたフォルムの美しさ、構図の決め方に目を奪われる。荒野の中に聳え立つ城は見た目に反して高度なハイテク技術が詰め込まれており、カラクリ屋敷的な造りも楽しい。中盤から登場する古めかしいロボットのデザインも大好き。瓦礫に座り込んだロボの寂しい姿とかシュールでイイ。

1952年に制作された『やぶにらみの暴君』は制作費が嵩み4年経っても完成はせず、紆余曲折を経て作者の意図に沿わぬ形で公開される。その後作者は権利やフィルム等々を取り戻し作品を納得のいく形で再構築し『王と鳥』と題名をあらためて1979年に完成させた、ということらしいです。いろんなクリエイターに影響を与えたというのも頷けるし、特に宮崎駿の『天空の城ラピュタ』や『君たちはどう生きるか』はここからの引用が大きかった。