たにたに

ランブルフィッシュのたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

ランブルフィッシュ(1983年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

【闘魚】2022年133本目

喧嘩に明け暮れる弟(マット・ディロン)の元に、姿を消していた兄(ミッキー・ローク)が戻ってきた。
彼のモーターサイクルボーイ時代を知る弟は、彼を尊敬し、再び街のギャングとして仕切ってくれるものだと思った。
しかし、彼の性格は穏やかで、何かを悟っているかのような面持ちに弟は困惑する。

白黒フィルムで撮られた映像からは、兄の哀愁を漂わせ、色覚異常である彼の視点を疑似体験しているかのような感覚を得る。
また、パーカッションの小刻みなリズムが不気味に奏でられ、掴みどころのない兄の心の様を表しているかのようだ。
耳が良くないという設定も、当時の若者の恵まれない日々のストレスから生じたものとも思われる。


今作のキーワードは、タイトルの通り<ランブルフィッシュ>だ。
兄はペットショップでランブルフィッシュの水槽を食い入るように眺め、その習性や世界に、自分の生きる社会との関連性を見出している。
ランブルフィッシュは闘魚。
お互いに殺し合う。だから水槽には仕切りがついている。でも広い川にいたらどうだろうか。水槽という小さい世界に閉じ込められているから殺し合いは起こる。広い世界に解き放たれれば、魚たちはきっと自由に生きるはずなのだ。
夜中にペットショップに襲撃し、彼は動物たちをゲージから解き放つ。そしてランブルフィッシュを川に逃そうとしたその時、彼は警官に銃撃され命を落とすのだ。

モノクロ映画であるが、唯一色をもつランブルフィッシュは地面の上でピチピチと横たわる。兄に寄り添って絶望するでなく、魚達を拾い上げ川に逃す弟の行動に、兄の思いを遂げる悲しくも切ない結末となった。


また、
作品前半〜中盤にかけて、明らかに"時計"を意味深に映し出す。
時間は有限であり、良くも悪くもただ未来へと進んでいく。
過去という単語には"過ち"という言葉が含まれているのが興味深い。過ちを消し去りたいけど、我々としては堆積していく感覚に近い。モーターサイクルボーイ時代の兄の過去は彼にとっては昔のことだが、警察官からすると憎しみの堆積。
人間がいかに一回の過ちに引きづられているか。



とにかくミッキーロークの登場シーンがカッコ良いので、一見の価値あり。
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