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同棲時代-今日子と次郎-のryotaのネタバレレビュー・内容・結末

同棲時代-今日子と次郎-(1973年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

こちらとても貴重な作品で、今観ると本当に時代は変わったような変わってないような、不思議な感覚に襲われます。山根監督の松竹青春映画ってなんか70年代の空気感が充満していて好きなんですよね。妙なクォリティが味わい深いです。

漫画原作をそのまんま映画にしているからか、山根演出なのか、随所で劇画タッチになっています。窓外はクロマキー処理されているし、テロップ多めでやたらと解説文字が踊ります。「愛と誠」とかもそうでしたけど、これがある意味特徴的で、今はあんまりやらない懐かしい手法です。話としては、同級生が久々に再会して、意気投合して同棲を始めて、10日で1ダースのコンドームを使うくらいの頻度でセックスして楽しく仲良く暮らすも、ある夜酔った勢いで避妊せずにセックスしたら妊娠してしまい、二人の関係性が微妙になっていきます。でも結果中絶して、病院でお腹空いたってヒロインがリンゴを食べて終わります。すごいですよね、これが映画になるんだから。そのプロセスをあくまで松竹のタッチでドラマチックに劇画風に描いているのがなんとも癖があってハマってしまいます。70年代当時の世間の感じも貴重で、電話ボックスとか会社とかもオールドな佇まい。同棲する二人は「今日は会社サボっちゃえ」って二人で無断欠勤したり、隣の奥さんが亡くなったら悲しくなって二人で部屋に戻ってセックスします。まるでロマンポルみたいですが、実際の性交シーンって実はほぼなくて、抱き合ったりキスしたりするに留めてるから、そこを期待すると全然ダメです笑。エロではなくてあくまでも二人の関係性を時代と絡めながら楽しみましょう。印象的なのは、ヒロインが後半でいう「私たちは愛という名のセックス遊びをしているだけ」。まさに、のほほんと生きていきたいという当時の雰囲気そのまんまで興味深いです。ストップモーション使ったりカットの繰り返し演出も含め、そこに馴染めるかどうかもあるけど、私はとても好きなタイプの映画です。これが松竹ではなくATGで東陽一あたりが監督だったらまた全くちがったドキュメンタリータッチの映画になってたかもって、想像するのも良きです。だとしたら主演は由美かおるさんじゃなかったかもね。

そう、これ絶対描かないとですが、ヒロインの由美かおるさんが抜群の魅力放ってるのは間違いないですぞ。この作品と「しなの川」は、のちの「火の鳥」とか「エスパイ」とか「ゆうひヶ丘の総理大臣」観る前に一度は観ておきましょう笑。現在70代で元気いっぱいの由美さんですが、本作の由美さん本当に可愛いです。しかもオールヌードを惜しげもなく披露しているし、そのスタイルも抜群でエロいっす(ちなみにウルトラセブンのアンヌ隊員ことひし美ゆり子さんも裸になってくれてます)。そう、この映画由美かおるさんの匂い立つようなあの雰囲気が充満してるんで、演技どうこうではなく笑、それだけで価値のある作品に違いないでしょう。ご本人もこの作品が転機になったとのちのインタビューでおっしゃってたくらい、のちの彼女の作品や個性を形作った記念碑的作品でもあります。男性諸君は心して観るように!
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