原題: Damage
ルイ・マル監督、ジェレミー・アイアンズ、ジュリエット・ビノシュ。
これは観るしかないだろうと。
しかし!
いつものジュリエット・ビノシュじゃなかった…。役どころ上、マネキンのような感情を押し殺した演技は秀逸でしたが、もし本作が自分にとって彼女の初めての作品だったら、即ファンになっていなかったかも知れない。
人間の貪欲さが不幸を招く。愛欲に溺れた人間の愚かしさと計り知れぬ喜び。そこには加害者と被害者という枠では括りきれないものが存在する。スティーヴン(ジェレミー・アイアンズ)とアンナ(ジュリエット・ビノシュ)の対照的なその後には不条理を感じる。
ラスト…スティーヴンの粗末な部屋には大伸ばしにした自分とアンナとマーティン(スティーヴンの息子)の写真が。生きていく上で人間は常に選択を迫られるけれど、それが出来ないとどうなるのか。たった一度の人生だからこそ、自分の心、欲望に正直に生きるべきなのか。悲しいかな、どのような選択をしても皆が幸福になるなんて夢物語。この世は残酷に満ちている。
携帯電話が無かった時代の不幸な結末…。今では描くことの出来ない筋書きに胸が締め付けられました。いつかはそうなったであろうけれども…。