サセナッフ

ダメージのサセナッフのネタバレレビュー・内容・結末

ダメージ(1992年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

なんでこんなに評価低いのか?個人的には好きな作品だし楽しめた。今回、20年振りに鑑賞。最後の蝉時雨の中フランスの田舎の古いアパートでスティーヴン(ジェレミー・アイアンズ)が一人佇むシーンだけが20年以上経ってもずっと記憶に強く残ってる。

過激なシーンだけが話題になるけど多くのメッセージが含まれていると思う。何不自由なく家庭も地位も安泰なイギリスの議員(それも大臣の椅子が約束されている)の苦悩と破滅がテーマ。また女性の方も途中関係を終わらせるチャンスはあったのに自ら種を蒔き、最後は望まない形で自分で落とし前をつけなければならなかった。一人の女性アンナ(ジュリエット・ビノシュ)と出会い、それがこともあろうに息子の恋人で婚約者だった。彼女との密会を重ねた末、全てを失う男の物語。

ジェレミー・アイアンズが演じる スティーヴンの背徳に悩み苦しむ表情が切ない。この役を演じるにベストな45才、白髪交じりの上品な英国紳士が素敵だった。
今まで自分の感情や意思をコントロールできたけどアンナ(ジュリエット・ビノシュ)のことは出来なかった。何度も別れようとしたけど抗いようのない理屈抜きの情念に負けてしまう。
ジェレミー・アイアンズはこういうファム・ファタールに堕ちていく役が似合う。

アンナを演じるジュリエット・ビノシュは当時29才、何を考えているのかわからない言葉少な目の魔性の女を演じる丁度いい年齢。細すぎない足や適度なボリュームもある腰も魅力的。ラブシーンも今見ると、アクロバティックで少しやりすぎな感じはあるけど絵としては綺麗だった。

スティーヴンの妻イングリッドの「そういう関係になったとき何故自殺しなかったの」「嘘をつき通せるとでも思ったの、あなたは悪人じゃないのに」って恨みの中に最大の皮肉と絶望が込められてて全てを言い当ててる。スティーブンは今までの経験からこの先一生退廃的で危険な関係を続ける自信があったのかと思う。

全てを失い「その後、空港で見かけた彼女は普通の平凡な女だった」って言いつつ後悔もなく自分の今の状況を受け入れて達観しているスティーブンに驚きと共感さえ感じた。
息子に「お父さんは情熱が欠けてる」って言われたけど全てを引き換えに一生を棒に振るほどの情熱は持ちあわせていたのだから。

ラブロマンス+サスペンスで最後の30分はハラハラと驚きあっという間の2時間だった。世間の評価は低めながら好きな作品。
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