Evergreen

奇跡の人のEvergreenのネタバレレビュー・内容・結末

奇跡の人(1962年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

約20年ぶりの鑑賞
大人にはなった今観ると、溢れる感情を押さえることができません
生涯忘れることはないだろう、良い映画です
鬼気迫る演技
それを感傷的になりすぎず、冷静に映し出すモノクロの画面
これは、いつかうちの子供たちにも観てもらいたいなぁ

【以下は、深井龍之介さんの著作やコテンラジオから知ったことです(映画では描かれていないこともあり)】
ヘレンの母が偶然読んだ、ディケンズの「アメリカ旅行記」に、ヘレンと同じように視覚と聴覚を失った女性(ブリッジマン)の話があった
ヘレンよりだいぶ年上のブリッジマンは、ハウ博士という人の教育により、読み書き、話を習得した
ヘレンの母親はハウ博士に希望を見いだすが、ハウ博士は既に亡くなっていた
しかし、ヘレンの母はベルという、ろうあ教育に尽力する発明家を知った
ベルとは、なんと電話を発明したグラハム・ベルだった
グラハム・ベルの母親も妻もろうあ者であり、ベルは「音」に強いこだわりがあった。だからこそ、電話の発明が成された(ベルがいなければ、スマホもないかも)
ベルの紹介で知った、盲学校は初代校長がハウ博士だった
その学校にサリヴァンはいた
サリヴァン自身も目に障害があった
脚に障害のある唯一の肉親である弟を亡くし、天涯孤独の身だった
サリヴァンは最初は慈善精神ではなく、生きるためにヘレンの家庭教師を引き受けた(今とは比べ物にならないほど、障害者の人権はなかった。働く場所もなかった)
サリヴァンはヘレンの家庭教師になることが決まると、ブリッジマンに相談しにいった
もう、おばあさんになっていたブリッジマンはサリヴァンに「障害を持っている子供でも、絶対に甘やかしてはいけない。本人のためにならないから」とアドバイスをしていた
そしてそのアドバイスがサリヴァンの教育の基本精神となった
ブリッジマンは幼少期、親に愛されずに育った
そんな孤独なブリッジマンに唯一優しく接したのは、知的障害のあるテニーという男性だった
テニーはブリッジマンに手話を教え、ブリッジマンに他者と接する楽しさをおしえてくれた
テニーに手話を教えたのもまた、当時のアメリカで最底辺といわれていたネイティブアメリカンだった
ネイティブアメリカンには気持ちを口から発する言葉だけではなく、手話によって伝える文化があった

映画のラストで描かれた名称や意味の概念の獲得後、ヘレンの成長は目覚ましく、なんと今のハーバード大学に合格している!(特別枠ではなく、一般試験)
サリヴァン先生の晩年には、サリヴァン自身が盲目となる
そしてそんなサリヴァンに点字を教えたのはヘレン

すべての人がつながっている
どのピースが欠けていても、ヘレンとサリヴァンの奇跡は起きなかった
もちろん人のつながりの可能性は、プラスの側面だけではなく、マイナスを生み出すこともある
しかし、この映画を観た直後の今は、人と人のつながりについての希望を信じてみよう
そう思わせてくれるのに充分な力を持っている、素晴らしい映画でした
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