いろどり

魔笛のいろどりのレビュー・感想・評価

魔笛(2006年製作の映画)
3.5
モーツァルトのオペラ「魔笛」の映画化。ケネス・ブラナーはシェイクスピアに留まらず、古典文芸を後世に伝える第一人者として欠かせない存在。好みの演技をする俳優ではないけれど、映画人として自らの使命を全うするようなブレない生き方が好き。

オペラを歌う口元を歯の光沢、喉の奥が見えるほどアップにする謎のカメラワークがあったり、ときどき変わったこだわりが入るのもケネス・ブラナーの顔がちらつくと面白く感じる。イギリスでケネス・ブラナーがどれだけ愛されているのか知らないけど、歴史ある国の人間として、文化の継承に携わる人への敬愛の念はイギリスも強いと思うので、悪くとられることは少ないのではないかと思う。ちなみにモーツァルトはオーストリアの作曲家。

アカデミー賞受賞作でモーツァルトの伝記、そして私の心のベスト10に入る映画である「アマデウス」のモーツァルト役のオーディションに落ちたというケネス・ブラナー。今作で監督としてモーツァルトに関わり思いは全て昇華できたのでしょうか。

ほぼ全てセリフは歌なので字幕はガッツリ見ずに何となく見ていた。

"3人の若く美しく賢い少年"が癒しの存在だった。ウィーン少年合唱団かLiberaのような透き通った歌声が清く美しく、見た目も可愛らしい。

一番有名な「夜の女王のアリア」は喜びの歌ではなく、自分を侮辱した男を娘に殺せという怒りの歌だったと知った。

二番目に有名な、男女が「パパパパ」と歌いあうシークエンスは見ているだけで楽しい(「パパパの二重唱」)。

正直よくわからないストーリーだったけど、原作も善悪が入れ替わる見ごたえある主題だけではなく、フリーメイソンが絡んでいるらしい裏の設定がよくわからないのでこれで良かったと思う。

作品として面白いかというと微妙ではあるけれど、オペラの敷居を下げて門扉を広げたケネス・ブラナーへの応援、尊敬の念を加味して、良い思い出の鑑賞とする。次は「魔王」の映画化をお願いしたい。
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