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かぼちゃ大当りのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

かぼちゃ大当り(1934年製作の映画)
4.0
【デヴィッド・リンチのお気に入り】
『死ぬまでに観たい映画1001本』に掲載されている変わった邦題の作品『かぼちゃ大当たり』を観ました。本作はThe Film Stageの記事《Get a Peek at 10 of David Lynch’s Favorite Films(2014/11/14,Nick Newman)》でデヴィット・リンチのお気に入り映画として選出された作品である。なお、邦題に何故《かぼちゃ》と入っているのかと調べてみたところ、W・C・フィールズが出演している作品に《かぼちゃ》とつける風習があったそうです。彼の出演作品では『南瓜とお姫様(1934)』、『南瓜サラリーマン(1935)』、『南瓜おやじ(1936)』といったように邦題に《かぼちゃ》とついています。

サイレント映画がトーキーに変わっても、サイレント映画時代のコメディ映画が実践した画と勢いによる面白さは失われることがなかった。それはジェリー・ルイス、フランク・タシュリンといった監督がその伝統を継承していったからだと言える。さて、その仲間であるノーマン・Z・マクロードが、トーキー時代の幕開けに撮ったこのコメディは確かにまだ《声》というメディアを使いこなせていない感じが強く、終始ギャーギャー登場人物が叫んでおり抑揚がきいていないイメージが強い作品だ。

しかし、シュールとナンセンスなコントの連続には今観ても色褪せない面白さがある。そして、デヴィッド・リンチが好きなのも頷ける。

序盤、夫が髭剃りをしようと洗面所に入るのだが、妻が先客として鏡を使っている。彼女に気を使い、鏡の狭間を使って髭を剃ろうとするのだが上手くいかない。妻の髪が男の顔に襲いかかったりするのだ。仕方ないので、小さな丸鏡を吊り上げて、髭剃りを試みるのだが、鏡がクルクル回転してなかなか剃れない。しまいには床に寝そべって髭を剃るのだ。このドンドン状況が悪化していく展開には爆笑である。

また、映画内のモラルとして障がい者は憐れみの目で見られがちなのだが、それに反抗して盲目の男が雑貨屋をめちゃくちゃにする場面。目の前に、沢山卵を積んでおき、そこに盲目のおじさんを突っ込ませるギャグを展開しているのだ。健常者と障がい者を均等に描くことで、無意識なる差別を批判したこのギャグの鋭さが1930年代時点にあったという事実に感銘を受けます。

さらには、『底抜けもててもてて』の原石であろうドールハウス的セットを使ったコントも秀逸である。階段にココナッツを落とし、睡眠の邪魔をする描写があるのだが、男が眠りに落ちようとするタイミングを見計らってココナッツが爆音で階段を転げ落ちる演出は、ドールハウスセットの利を有効活用した賜物だと感じた。

日本ではほとんど知られていない作品ですが、隠れた名作です。

★おまけ:デヴィッド・リンチのお気に入り10本
1.8 1/2(フェデリコ・フェリーニ,1963)
2.サンセット大通り(ビリー・ワイルダー,1950)
3.ぼくの伯父さんの休暇(ジャック・タチ,1952)
4.裏窓(アルフレッド・ヒッチコック,1954)
5.かぼちゃ大当たり(ノーマン・Z・マクロード,1934)
6.アパートの鍵貸します(ビリー・ワイルダー,1960)
7.道(フェデリコ・フェリーニ,1954)
8.ロリータ(スタンリー・キューブリック,1962)
9.オズの魔法使(ヴィクター・フレミング,1939)
10.シュトロツェクの不思議な旅(ヴェルナー・ヘルツォーク,1977)
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