くまちゃん

恐怖城/ホワイト・ゾンビ/ベラ・ルゴシのホワイト・ゾンビのくまちゃんのレビュー・感想・評価

3.3
ゾンビの起源はハイチの民間信仰ブードゥー教にある。神官の呪術により活動能力を付与された屍の事であり、それは神官の命ずるままに使役するとされる。
1929年、アメリカの探検家がハイチへ渡り取材を敢行、後に出版された著書によりその存在は広く知られる事となった。
モンスター映画全盛期のハリウッドではフランケンシュタインの怪物やドラキュラに変わる新たなホラーアイコンを探し求めており、その隙間にハマったのがゾンビであり今作である。
しかしその後、ジョージ・A・ロメロがジャンルとしての方向性を確立するまでゾンビ映画は低迷が続くことになる。

今作ではゾンビは仮死状態であれば死亡していなくてもゾンビとして隷属させることが可能である。
そのためゾンビと化したマデリーンがラストでは正気を取り戻しニールの胸に顔をうずめるハリウッドらしいハッピーエンドで幕を閉じる。
現在ではゾンビから人間に戻るのは、死者蘇生に等しいため論理としてありえない。
ゾンビ映画の元祖であり、黎明時代の試行錯誤が当時でしか出せない味を演出する。

無条件で半永久的に活動できる労働力を求めるのはいつの時代も変わらない。

ルジャンドルとボーマンの交わし損ねた握手が後に交わされたり、強引に手に入れようとした愛がいかに虚無的であるかというボーマンの苦悩や葛藤の描写等、ノリや勢いだけではなく考えながら制作されているのがよくわかる。

今作ではゾンビそのものではなくゾンビ化することとゾンビマスターへの恐怖が強い。
ゾンビマスターを演じるベラ・ルゴシの不気味で傲岸不遜な存在感が「魔人ドラキュラ」とも異なる畏怖の念を抱かせる。またメイクアップを担当したのが「フランケンシュタイン」のジャック・ピアースであるため、当時のモンスター映画のハイブリッド作品とも言えるのかもしれない。
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