horahuki

恐怖城/ホワイト・ゾンビ/ベラ・ルゴシのホワイト・ゾンビのhorahukiのレビュー・感想・評価

3.7
婚約中の男女が結婚式を挙げにやってきたお屋敷。実はその屋敷の主人は、彼女のことが好きで、魔術師であるゾンビマスターと結託して自分のものにしてやろうと企てる話。

世界で初めてゾンビが登場した映画です。現在のゾンビ像を作り上げたのは、ロメロの『ナイトオブザリビングデッド』ですが、それより30年ほど前にすでにスクリーンデビューを果たしているんですね。

この映画に出てくるゾンビは、ロメロ以降のゾンビとは全然違います。人肉を食べたり、感染して増殖したりはしません。ブードゥー教を意識したもので、心がなく人の命令を聞いて働く奴隷として出てきます。そもそも死んでるのかどうかも割と怪しいです。

冒頭、道路で葬式(埋葬?)をしてるシーンがあります。死者が掘り返されないように人が通る道路で行なう風習のようで、ものすごく異様な雰囲気で始まります。ゾンビの登場シーンも白黒で画質が荒いことも相まってかなり不気味なのですが、ゾンビを描く映画ではなく、それらを使役する魔術師の映画です。この魔術師の存在感がものすごいです。

屋敷の主人と魔術師は、カップルの彼女の方をゾンビ化して、自分のものにしようとします。心のない者を人と呼べるのか…とか心のない者を愛することはできるのか…ということを描きたかった映画だと思います。ゾンビ映画好きな方は必見です!

R2.11.7再鑑賞
『魔人ドラキュラ』や『ミイラ再生』と同様、異国への恐怖を反映するとともに、自国のおぞましさまでも植え付ける。歯車としての人間を伝える砂糖工場での無機質で規則正しい音、カエルの鳴き声やハゲワシの絶叫、冒頭のブードゥーの歌等、音に絶大な信頼を置いて演出が構築されているのがわかる。傷心の男の心象世界を表現したかのような、周囲全てが影となる映像により自身の内面と周囲を隔てる距離感を語り、その影に愛するものを見てしまうことからも同様に距離を感じ取れる。奥行きのある空間の奥と手前に対比する者を置き、その中心地でせめぎ合いをするクライマックスの象徴性も面白く、次々に下りてくる死の行進の防波堤としての戦いにはグッときた。彼らにも元に戻る可能性があったのかは議論の的になることが多いと思うけれど、この演出を見る限り、既に彼方側の存在として登場させた意図がくみ取れるわけだから、その可能性はないと考えるが妥当ではないかと思う。
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