一人旅

アタメの一人旅のレビュー・感想・評価

アタメ(1989年製作の映画)
4.0
ペドロ・アルモドバル監督作。

ポルノ女優マリーナと青年リッキーの異様な愛のかたちを描いたドラマ。
リッキーとマリーナの関係は特殊だ。マリーナに一方的に想いを寄せるリッキーはマリーナを部屋に監禁し、逃げられないよう手足を縛る。だが一方で、体調の優れないマリーナのために薬を買いに行ったりするし、“俺は君を愛してる。だから君も俺を愛してほしいんだ!”なんて強引過ぎる口説き(?)文句でマリーナに訴えかける。二人の関係は、監禁された人間が監禁者に愛情を抱いてしまう“ストックホルム症候群”と類似していて、監禁生活が長引くにつれリッキーとマリーナの関係に変化が訪れていくのだ。
タイトルの付け方が素晴らしい。マリーナが小さく呟く“ATAME=私を縛って”という言葉には、リッキーに対する愛と、監禁に対する恐怖心の両方が含まれている。愛したい・・・でも怖い、という複雑な心境を端的に吐き出した言葉が“ATAME”なのだ。
本作にはアルモドバルらしい洗練された色彩感覚はそれほど見られない。アルモドバルの映像スタイルが確立されるまでの過渡期に当たる作品に思えるが、それでも一瞬映し出される色鮮やかなステンドグラスは鮮烈に印象に残る。
また、主人公リッキーに扮したアントニオ・バンデラスの美男子っぷりも見どころだ。個人的に長髪のイメージが強かったバンデラスだが、本作では丸刈りに近いほど短髪。高校球児のような爽やかな見た目とは裏腹に、女性に暴力すら振るう超肉食系ストーカー男子を好演している。
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