くりふ

アタメのくりふのレビュー・感想・評価

アタメ(1989年製作の映画)
3.5
【しばって告る、しばられて目覚める】

これは初公開時にみましたが、同監督作『私が、生きる肌』をみていたら、女を監禁して愛されるのを待つ男、というベースが同じだなー、と思い出し久しぶりにみたくなりました。こっちも監禁男がバンデラスだし。

で、こんなに面白かったっけ?と、小さなうれしさ再発見、となりました。

ビクトリア・アブリル演じる縛られる女、マリーナの「転向」が唐突なのと、彼女に執着するもう一人の男が途中で失せ、彼の役割が曖昧になったこと、たぶんこれらの影響で、お話が加速しないのが弱みではありますが、気軽なアブノーマル(笑)を楽しめる、可愛らしい背徳良作だと思います。

要はこのお話って、ストックホルム症候群のある事例、なのでしょうね。マリーナ「転向」のきっかけとなる、監禁男のイタイ事件だって自業自得。

なのに、函の中で思い込むマリーナは、いつしか心が出火してしまう。男と女の間では、愛か犯罪かの境界線は、互いの腹の内にある…(笑)。

第三者が不可視なこれ。だから、ああ受け入れたマリーナのお姉ちゃんは、英雄なのか、ギャンブラーなのか?(笑) 奇妙な顔でも骨ある女でした。

あ、顔と言えば、実写版ピカソ女ことロッシ・デ・パルマさんを、久しぶりに見て目ぇ覚めた。昔からアルモド常連だっけ。やっぱ顔長え!(笑)

ビクトリアさんは決して美人でもナイスバでもないけれど、実にキュート!「転向」して一戦燃えた後が一番キレイ、というのが大人の女ですねえ。カナでアタメて読んでもピンと来ないけど、彼女が囁きゃピンピンです(笑)。

本作ではバンデラスもキュート!(笑) 彼にアタメて言われりゃ逃げるけど。

エッチな要素は揃っているのに、監禁男の欲望はそこが中心じゃないから、根は爽やかでさえあります。この話でそうなるのって、おかしな筈なのに。

逆に、もう一人の男のギラギラ視線がマリーナを艶めかしく仕立てていて、マリーナからもアラサー女らしい欲望が透ける所が、本作のエロティック。

モリコーネらしからぬ、とも取れるリリカルな音楽が、心を晴らします。これ、確か公開当時、サントラ買っちゃった記憶がありますね。

<2012.7.25記>
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