半兵衛

アタメの半兵衛のレビュー・感想・評価

アタメ(1989年製作の映画)
3.0
ストーカー紛いの男性に監禁され一方的な愛で責められるポルノ出身の女優の受難というサスペンスっぽい題材なのに、緊迫感など微塵も存在せずカラッと陽気に描写されているのは時代のせいなのか、お国柄なのか。監禁する男性のみの視点で話が進行してそんな犯罪者に女性が惚れるという都合の良い展開やヒロインが裸になりまくることや絡みが結構入っていることもあって日活ロマンポルノの及第点作品を見ているような気分になってくる。

ストーカー男性を何のコンプレックスももたないイケメンな若い頃のアントニオ・バンデラスが演じているので、鑑賞する身としてはこんな二枚目だったら許されるでしょうよと共感できなくなってくる。しかもいく先々で女をたらしこむスケベ男のためますますポルノ要素が強くなる。

ヌードはもとよりヘアまで解禁するビクトリア・アブリルの女優魂に感心する、ただ肝心の下の毛が意味のわからない遊戯まがいのシーンで披露されているので興奮するというより困惑する羽目に。

主人公の二人が犯罪者と被害者という立場が鮮明だった前半はまだ面白かったが、二人のどうでもいいメロドラマが出てくる後半は恋愛オーラにあてられている心情になってきてひたすらだらけてくる。都合の良すぎるラストになるころには「もうどうでもいいや」と投げ出したくなるはず。

ヒロインが主演を務めるB級ホラー映画の裏側が丁寧に描かれており、病気で下半身不随となりながら作品に取り組む監督やスタッフの会話から映画に携わる人間の心持ちや映画を完成させることの意義が伝わってきて味わいがある。でもメインのドラマに特に関わってこないのでここを深く掘り下げてもという気持ちになるのも事実。
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