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ワンダー・アンダー・ウォーター 原色の海のyuumのレビュー・感想・評価

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モルディブの海を漂うマンタや海蛇たちの躍動感のあるショットには目を奪われるし、102歳まで彼女が「美」をキャプチャする能力は衰えなかったことを判然とさせていた。けれども映像の質がハンディ・カメラの域を出ていないせいか、あるいは撮影の指示はレニ本人が下しているだろうがカメラマンが彼女の40歳年下のパートナーだからなのか、ホームビデオ感は否めず。「個のクローズショットと全体のロングショットを反復するかわりに、地形や場所のディテール情報は一切ないんだね」という父のコメントに頷きながら、それは理想美を追求し続けた彼女の生き方にも表れていると思った。というよりも、レニは理想主義として生を全うした作家だったからこそ、彼女が心惹かれた美しいものだけに眼差しを向け、映画を撮り続けたのだろうし、それ以外の情報は不要なものとして排除したのだろう。ヒットラーの寵愛を受けた第三帝国時代に、ナチスのユダヤ人迫害を「全く知らなかった」と言えるくらいに、きっと自分の見たいものしか真実見えない人だったのだろう。
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