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日本解放戦線 三里塚の夏のSariのレビュー・感想・評価

日本解放戦線 三里塚の夏(1968年製作の映画)
3.7
土本典昭監督・小川紳介監督連続上映にて。

1966年7月、政府は地元住民の合意を得ずに、新国際空港を千葉県成田市三里塚・芝山地区へ建設することを閣議決定。土地を強制収容する政府に対し、対抗する農民を描いた三里塚シリーズ第1作。

この三里塚シリーズでは、撮影対象と共に生活し深い関係を築いて撮影する"小川プロ"スタイルがより本格化し、7作品が連作された。それにより、対象をすべて真正面から撮っているのが凄いが、このようにカメラの存在を対象に認識させて、劇映画を意識させる演出は、原一男監督に継がれていると言っても過言ではない。(土本監督の精神と小川監督の演出、お二方の作家性の良い部分を引き継がれているのではと。)

この映画では建設反対運動を起こす地元民・全学連の学生たちと空港公団・機動隊との激しい闘争、そして人間の姿が克明に記録されている。
混沌とした闘争シーンの間に、学生の主導者らしき青年2人の対話が挟まれる構成となっている。彼らは闘争についての真意と哲学を語り合う。顔のクローズアップを用いた映像と、会話の音声が微妙にズレているため、アフレコだったのだろうかと思いながら見ていたが、このシーンを挟むことにより単調な闘争映画ではない映画の〝運動〟として見せることに成功しているだろう。

またこの三里塚シリーズは単なる闘争映画ではなく、熱い人間の熱い高揚感ーベートーヴェン第九に始まり第九に終わるラストーその高揚感が突き抜ける。人間讃歌ともいうべきエネルギーが充満した映画である。

2023/07/16 名古屋シネマテーク
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