むるむる

Vフォー・ヴェンデッタのむるむるのネタバレレビュー・内容・結末

Vフォー・ヴェンデッタ(2005年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

DCコミック原作ということもあらすじも何も知らず視聴。
予想に反してヒーローもので驚きつつかなり楽しめた。
ヒーローものではあるがやはりDCっぽいというかダークヒーロー的で、本作は独裁国家への反逆、革命の物語であり、民衆の物語でもあった。

第三次世界大戦後、謎のウイルス、秘密警察…と遠い世界のことのようで、これは一歩間違えただけのあり得る世界線、起こりうる国の変化だった。
ドイツでもロシアでもない、未来のイギリスをそういう国として描いているのがまた我が事のように捉えやすい。かつて平和だった国が少しずつ過激思想に染まり、「表現」「解釈」という言葉が危うくなり、「他の人達と違う」ということが命に関わる事態になっていく過程が丁寧だった。

2006年時点で迫害されてしまう性的マイノリティの権利を描いているとは思わなかった。
家族も友も奪われ「命しかない」と思っていたヒロインが恐怖を乗り越える過程に「奪われても抵抗した」マイノリティの手記を見せるのには胸が熱くなった。Vのやり口の過激さは衝撃だったが、しかし一番好きなシーンになった。

終盤、ついに民衆が立ち上がる革命が起こるが、その引き金になるのが子供の犠牲というのがつらかった。確かに歴史上で大きな変化が起こる時というのは子供のような「無垢な存在」の犠牲があるとわかるし、これほどの衝撃がなければ長く培われた圧力に反逆できないとわかるのだが、それだけにつらかった。
理解はできるし納得はできるが、子供の犠牲がなくては世界は変わらない、変化に犠牲は不可欠だとは思いたくない。
国が狂っていく時、ここまで追い詰められる前に変わらなくてはならないと思った。

ここまで革命の物語として書いてきたが、ヒーローものとしてどうだったかというと、近年のヒーローものラッシュに慣れてしまった私の目にはちょっとだけ古く映った。
しかしこれは制作年を加味しても仕方ない(昔のCGより今のCGの方が自然に見えるみたいなそういう話)なので、個人的には気にならず物語を楽しめた。
国が傾く時何が起こるのか、その国を変えるには…という反逆と革命の物語として人に勧めたい。