ムック829

メンフィス・ベルのムック829のレビュー・感想・評価

メンフィス・ベル(1990年製作の映画)
3.8
第二次世界大戦時、米国空軍は25回の出撃を達成すれば国への帰還が許されていた。
爆撃機「メンフィスベル」の乗組員たちはついに25回目の出撃を迎えた。

戦争映画なのに笑顔になれるというか、爽やかな印象さえ抱かせる映画。
出撃前の軽いテイストからの戦場での緊迫感への切り替えが素晴らしい。
10人も搭乗者がいるから潜水艦映画のような連帯感を感じさせ、爆撃機からの視点というのも面白くて良かった。

「民間人は巻き込みたくない、でもとっとと仕事を済まして生きて帰りたい!」
命の危険にさらされた青年たち、行くか引くかで葛藤し一悶着する辺りがリアル。
ちょっとしたかすり傷でも大騒ぎ。それが生きるか死ぬかの瀬戸際にいる者らしさを感じさせる。

好きなのは出撃前夜「メンフィスベル」に一人で語りかけるシーン。
お世話になった相棒(メンフィスベル)についつい語りかけてしまう気持ちがわかるんですよね。
車を買い換える時に、思い出が詰まった車に感謝するみたいなね。
そんな素敵なシーンの後に機体の中で✕✕してる奴がいて台無しになるのがまた笑。

ラストシーンも素晴らしい。自分たちの信念を、矜持を貫いたことに清々しさを感じました。
まあ原爆まで落とされた日本人としては、こんなのアメリカのプロパガンダだと複雑な思いもあるけれど。
メンフィスベルの若者たちや当時のアメリカの考え方が立派だったという事実は変わらない。

ちなみにこの映画の元ネタとなった、記録映画の「メンフィスベル」も存在しているらしい。
ローマの休日で有名なウィリアム・ワイラーが、実際に従軍中のメンフィスベルに5回も乗り込んで撮影したというから驚き。

ドラマたっぷりでドキドキ出来て、戦争映画なのに爽やかな気持ちさえ抱かせる作品でした。
ムック829

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