たけちゃん

メンフィス・ベルのたけちゃんのレビュー・感想・評価

メンフィス・ベル(1990年製作の映画)
3.8
みんな一緒に祖国にかえろう


マイケル・ケイトン=ジョーンズ監督 1990年製作
主演マシュー・モディーン


シリーズ「娯楽映画で振り返る第二次世界大戦」
第4弾は「メンフィス・ベル」です。


第2弾で紹介した「空軍大戦略」は主に戦闘機による戦いでしたが、今作は爆撃機による空爆の話です。

「バトル・オブ・ブリテン」の敗北の後、1941年5月にドイツ軍のイギリス上陸作戦は放棄されます。以降、連合軍はイギリスに駐留して、空軍によるフランス、オランダ、ドイツ本国などの空爆作戦が実施されるようになります。

何とか上陸作戦を阻止したとはいえ、まだまだヨーロッパ諸国はドイツに占領されたままで、ドイツ軍の勢いは衰えていません。陸戦で占領地を奪還するためにも、ドイツ軍を疲弊させることが必要なのです。


そのため実施されたのが、B-17F爆撃機による昼間爆撃でした。担ったのはアメリカ第8空軍です。こういう作戦で撃墜された人たちが、大脱走の捕虜収容所に入れられていたんですよね~( ˘ ˘ )ウンウン





本作の主人公は、そのうちの1機、メンフィス・ベルと呼ばれたB-17爆撃機に乗る10人の若者。

当時は、25回飛んだら祖国に帰れることになっていたらしく、メンフィス・ベルはすでに24回飛んで、唯一の無傷という機体でした。次がラストフライトの予定で、その後は本国で国威掲揚のために活動することになっていたのです。


そんなラストフライト、非情にも軍から示された攻撃目標は、ドイツ本国のブレーメンです。そこにはドイツ軍の190型戦闘機(もずの愛称を持つヴュルガー)の工場があり、今後の作戦上、なんとしても潰しておきたいものでした。

実際、ブレーメンは大戦中、172回も空爆を受け、市内建造物の6割が破壊されたそうです。

しかし、ドイツ本国上空ともなると、強力な高射砲が待ち構えており、空爆はおろか生きて帰ることが極めて困難な作戦です。ラストフライト、彼らは無事に帰還することができるのか……。



空軍大戦略などの大作で、マクロ的に観ていると分かりませんが、兵士個人にスポットを当てると、従軍していたのが本当に若者ばかりだと分かります。本作でメンフィス・ベルに搭乗するのも、18歳、19歳という若者たち……。それは僕の息子の年齢です。

機長を務める大尉のマシュー・モディーンですら20代前半。日本もそうでしたが、戦っているのは本当に若者なんですよね。切ない。


映画で描かれる彼らは、自分勝手なところも多いし、途中でふざけたりする姿を見ると、本当に子供です。チームとしても、どちらかと言うと、バラバラ。任務を終えて、地元に帰ったら何をしようかと夢を語る姿は、戦争をしているとは思えないほど。だって、まだティーンエイジャーなんですから。出撃前夜はダンスパーティでした。こういうところは、日本とは違うよね~。


そんな彼らが、最後のフライトで迎えた困難を乗り越えるうちに、ひとつにまとまっていく。今作は、そんな姿に胸打たれる青春ムービーともなっているのです。




実はこの「メンフィス・ベル」、従軍監督として戦地にいたウィリアム・ワイラー監督の手でドキュメンタリー映画も撮られています。僕は観たことがないのですが、本作が実話に基づく作品であることが裏付けられますし、機会があれば、そちらも観てみたいです。


さあ、次はいよいよD-Day「史上最大の作戦」です