Ricola

ビューティフル・マインドのRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

ビューティフル・マインド(2001年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

実在の天才数学者のジョン・ナッシュの自伝的作品。
彼の生きづらさという側面だけではなく、タイトルの通り彼の持つ美しく純粋な心が、光るものや浮かび上がるものの演出を通して描かれる愛の物語である。


まず冒頭のシーンの光の反射が繋がっていく演出に心を掴まれた。
太陽光がガラスに反射して虹色の光を放ち、その光が他のガラス製のものに当たっていってどんどん結びついていくのだ。
まるでバラバラの数字がまとまりのある数式へと結合されていくようなのだろうか、一筋の光が線を成していく様が美しい。

また、夜空に輝く星に向かって、彼女の手をとって指を指すシーン。
その星も、星座を作りうる点から線を成すものである。
ジョンが窓ガラスに書いた計算式やスクリーンに示された数字の羅列、新聞記事のアルファベットが、部分的に光り始めて浮かび上がり彼の頭を占拠する。
これらは彼にとって美しいものとして表現されているわけではないが、彼の心を動かすものとしては変わりない。

愛の物語がこの作品における主題と言っても過言ではないだろう。
ジョンとアリシアの関係は永遠に続く根拠もデータもないけど、信じている。
信じることが大切なんだと。
数学は一つ一つ立証されたうえで数式が紡がれていくことで、未知の領域にまでたどり着くことができる。
先のことなんてわからないけれど、信じる心を貫き、信頼の積み重ねをしていくことがパートナーとの関係のうえで大事なのだと、作中を通して常に示されていく。
こうしたパートナーシップは理想的ではあるが、実際にそれを継続していくことはどれほど困難なことだろうか。

例えば、ジョン自身が苦しくて仕方ないけれど、その苦しみのすべてを理解することは彼の妻であっても不可能である。
それでもひとりで苦しみを抱えて生きていくことは孤独でしかないだろう。
だからこそ、彼女がそれを理解しきれないとしても、彼に寄り添って信じることで支えることを惜しまない。

ジョンが若い頃夢見た姿が、彼の集大成を示す象徴的なシーンとして再び現るのは、これまでの苦悩や悲しみをも包み込むほどの感動をもたらしてくれる。
苦しみに苛まれることが多かった人生であったかもしれないが、彼の才能と生き様、そして妻の存在が彼をここまで連れて来たことは明らかだろう。
人生讃歌的な締めでありつつも、ジョンが引き続き共に生きていかなければならない苦しみとの向き合い方も描かれており、「生きること」について考えさせられる作品だった。
Ricola

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