和桜

怒りの葡萄の和桜のレビュー・感想・評価

怒りの葡萄(1940年製作の映画)
4.0
1930年代、行き過ぎた開拓により断続的な砂嵐に襲われるオクラホマ州。代々その土地で暮らしてきた一族は、農業の出来なくなったこの土地を離れカリフォルニアへと向かう。定員オーバーのオンボロ中古車でアリゾナ砂漠やロッキー山脈を越えて、生き残った農民は労働者となり、大恐慌と機械化により労働力が溢れる資本主義社会に翻弄される。

冒頭、ディストピアSFの導入と言われても違和感のない、白黒映像の砂嵐と吹き飛ばされそうな民家にまず驚く。そこからの脱出を図る命懸けの旅路は、ルート66を巡るロードムービーの金字塔でもあって今見も全く色褪せない。
人間にとって何代にも渡って同じ土地を受け継いでいくことの意義は、自分にはピンとこないはずなのに何故か惹かれてしまうテーマ。土地を持っていた頃は単純だった事が、そこを離れることで家族までもバラバラになっていく。確かな基盤を失い、何も信頼出来ずに嘆く姿は現代へと続いていく。

何度も痛めつけられると根性が曲がって恨みに満ちた人間になる。そうなってないかい?と何度も息子に確認する母親はこの一族の大黒柱。何があろうと生き続けるのは私たち民衆だ!と、この時代の大衆映画はやっぱり最高だと実感させてくれる。
和桜

和桜