ブタブタ

チリンの鈴のブタブタのレビュー・感想・評価

チリンの鈴(1978年製作の映画)
3.5
伝説のトラウマアニメ。
原作は『アンパンマン』のやなせたかし先生である。
恐るべき狼ウォー(声は星一徹)に目の前で母を殺された子羊チリン(声はキャンディキャンディで知られる松島みのり)の壮絶な復讐譚。
本作を知ったのは『伊集院光の深夜の馬鹿力』で、伊集院氏が幼少のみぎり姉君に連れられ見たくもないアニメ映画を見に行った際に同時上映の『チリンの鈴』を見て「何なんだこれは…」姉君と共に唖然となったらしい。
伊集院氏の解説でもネタバレしてるのでネタバレで悪しからず。
↓↓↓⚠️以下ネタバレ含みます⚠️↓↓↓





ビジュアルのパッケージ詐欺がすごい。
『バンビ』を見に行ったら『マッドマックス』を見せられた様な作品。
牧場で平和に暮らす羊達。
しかしそこに狼ウォーが突然襲来。
牧羊犬達を瞬殺、羊達を襲う。
このウォー登場の場面、外の牧羊犬達の悲鳴から何か邪悪なオーラを発する「影」だけが中に入ってきて羊達を次々と襲う。
真っ黒な影に片目の赤い傷だけが光っている描写がまるで「ジェボーダンの獣」みたいな禍々しさ。
そしてチリンを庇った状態でチリン母は死亡。
既に死んでいる母羊を必死に起こそうとするチリンが悲しい。
そして、
「弱い者は強い者に殺されるだけ」という自然界の食物連鎖、世の理を真っ向から否定し「狼より強くなり母を殺したウォーを殺す」という一念であろう事かウォーに弟子入りし修羅を道を行くチリンの冥府魔道の旅が始まる。
成長したチリンは鋭い角を持つ巨大な獣でありもはや魔物と化している(声もケンシロウ(神谷明))
『エル・トポ』で父エル・トポに捨てられた息子ブロンティスは父に復讐すべくガンマンとなる。
しかし最後は「師は殺せない」と銃を下ろす。
しかしチリンは「師」であり「仇」であり、最後は「父」に等しい存在となったウォーを殺す。
この辺りの描写は『子連れ狼』の結末、大五郎と柳生烈堂の余りに悲しい最後に匹敵する。
チリンとウォーの対決は殆どチリンの一撃でウォーが倒される。
ウォーはチリンにたおされる事が初めから分かっていた様な、この辺りチリンの声のせいもありまるでケンシロウとラオウの最後の対決の様である。
「もはやチリンは狼でも羊でもない得体の知れない化け物になってしまいました」
一人山へと去っていったチリンの鈴だけが時々風に乗って聞こえてくるという昔話…
ってこれを当時劇場で何の気構えもなく見せられた子供達は衝撃だったと思う。
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