マヒロ

ハリーの災難のマヒロのレビュー・感想・評価

ハリーの災難(1955年製作の映画)
3.0
とある小さな村に住む元船長のワイルズという男は、こっそり禁止されているはずの狩猟をしている途中、森の中で頭から血を流して死んでいる男を発見する。自分の流れ弾で死んだと思ったワイルズは必死で死体を隠そうとするが、死体を見つけた少年アーニーに連れてこられた母親・ジェニファーや、たまたまスケッチ中に死体を発見した売れない画家のマーロウなど、次々と死体の関係者が増えていくことにより事件がややこしくなっていく……というお話。

サスペンスの神様・ヒッチコックが、そのサスペンスのフォーマットをまるっとコメディにしてしまったような作品。
やってもない殺人の容疑者にされそうになるという緊張感あふれるシチュエーションのはずが、のどかな村の人々はどこか能天気で全くシリアスな雰囲気になっていかないのが面白い。全員が思いつきで行動するため、あっちこっちに引き摺り回されたり地面に埋められたり掘り返されたりと、死体とはいえめちゃくちゃ杜撰に扱われるところはなかなかブラックで、よくよく考えると結構怖いことやってる気もする。

アイデアは面白いんだけど、時代もあってかキモであるブラックさはそこまででもなくて、そこまで鮮烈な印象はなかった。何だかんだで良い話に収まってしまうオチも含めて全体的にほのぼのしすぎで、もっと大変な事態になっても良いし、登場人物はもっとアホでも良かったかなと思う。ヒッチコックの映画は時代を感じさせない演出で驚かせてくるような作品も多いけど、今作はそういうキレの良さが感じられなかったかな。

(2022.216)
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