猫脳髄

ハリーの災難の猫脳髄のレビュー・感想・評価

ハリーの災難(1955年製作の映画)
3.8
(2023.7.19 再鑑賞)

アルフレッド・ヒッチコックの珍しい全編コメディ作品。脂ののった時期に製作されたリラックスした軽みに好感が持てる。

紅葉が豊かに彩る牧歌的な片田舎の美しい全景…と思いきや、葉っぱはすべて貼りつけたものらしく、そこからヒッチコックの魔術である。村はずれの森で狩りを楽しむ元船長が発見したのは、あおむけに倒れた紳士「ハリー」の死体。すわ、自分が誤射してしまったかと動揺するが、次つぎと現場に現れる村人たちは死体を気にする様子がない。心配になった元船長は、村に住む画家(ジョン・フォーサイス)に相談し、2人は死体を埋めてしまおうとするが…という筋書き。

死体そのものが作劇上の重要アイテム(いわゆるマクガフィン)として機能し、登場人物たちが埋めたり掘り返したり隠したり汲々とする。ヒッチコックがよく用いる「誤解」のモティーフと、畳みかけるツイストによるサスペンスの高まりが、コメディでも有効であることが証明されている。本作がデビューとなるシャーリー・マクレーンの明るく能天気なキャラクターもアクセントになっており、実に楽しい作品。
猫脳髄

猫脳髄