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ハリーの災難のnowstickのレビュー・感想・評価

ハリーの災難(1955年製作の映画)
3.5
死体を巡るサスペンスをコミカルに描いたヒッチコックの変化球作品。

良かった点は、テクニカラー特有のペンキをひっくり返した様な色合いが、作品のおとぎ話みたいな世界観にマッチしていた点だ。
個人的に、「裏窓」や「めまい」のテクニカラーの色合いは、デザインとして美しいのは認めざるを得ないが、ガチガチのサスペンスに丸みを与えてしまっている感じがしてならない。あえて甘いカラーにする事で不気味感を与えるとかならまだしも、そういった効果を狙っているとも思えないので、映画のテーマがブレてしまっている様な気がする。
一方、本作はテクニカラー最初期の「オズの魔法使い」みたいな世界観になっていて、殺人事件とユーモアのコントラストを描きたかったヒッチコックの意図にも合致しているのだろう。

とはいえ、本作は試みとして特段失敗しているとも思わないが、本作の影響を受けた後発の作品が出ていないことや、現在、本作が他のヒッチコック作品と比べて語られる機会も少ないため、特段成功している訳でも無いんだろう。
ヒッチコックは沢山映画を作って当てていくタイプの監督だと思うので、まあ悪くは無いが、この映画は、普通の映画だと思う。
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