半兵衛

日本女侠伝 鉄火芸者の半兵衛のレビュー・感想・評価

日本女侠伝 鉄火芸者(1970年製作の映画)
3.3
前作は女牧場主と新味をつけたのに、今回は一作目の芸者に逆戻り。話の内容もいつもの任侠映画のパターンに戻り、安定と言えばそうだがややマンネリ気味に。

明治時代の戦争景気に沸く炭鉱を舞台にした一作目に対して大正の米騒動を背景にしたり、主人公の藤が自分に迫る男たちを拒み愛する男性のために操を立てるサイドストーリーなど様々な工夫を施してはいるが、それがドラマの面白さとして作動せず単なるディテールに終わっているのが辛い。あと任侠映画は悪党の嫌がらせや悪事に主人公たちが耐えるという流れがよくあるけれど、この映画は物語にかなりの比重で悪人絡みの話が挿入されていてちょっと気が滅入るのも難。しかも主人公によって悪事が解決せず、藤が大物の伴淳に頼って何とかするという他力本願みたいな展開が多いのも活劇の流れを削いでいる。確かに起こる出来事が政治的な問題なので一介の芸者やヤクザには解決できないことはわかるけれど。

でも藤純子の美しさは十二分に撮られているので見ていて飽きないのも事実、安部徹の安定した悪党ぶりや藤のライバル的存在である姉さん芸者・弓恵子もいい仕事をしている。今回藤のパートナー役を担当する菅原文太は真面目な役をそつなくこなしている感じだが、ラストの殺陣シーンで本領を発揮する。高倉健や鶴田浩二には出せない、強いて言えば渡哲也に近い狂犬の見事な暴れ姿を披露。
半兵衛

半兵衛