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男はつらいよ 望郷篇のmatchypotterのレビュー・感想・評価

男はつらいよ 望郷篇(1970年製作の映画)
4.1
《ご長寿の映画》、Vol.24。
この企画、唐突にここらで急にあと3本でいきます。

シリーズ5作目、ちょっと間が空いて再び監督は山田洋次監督。

今までで1番観やすくて、笑ってホロッと来たかもしれない。
話の流れがとても良く、団子屋、さくら、博、タコ社長、登たちお馴染みメンバーのキャラが余すことなく滲み出てる。
初作以来、『男はつらいよ』の原型のようなものを感じながら観れる。

いつもの“寅さん節”とお騒がせ道中があって、今度こそはそれなりにうまくいくかと思いきや「これが渡世人の辛えぇとこよ」のオチになる。

最高に心温まる義理人情と「今日も涙の日が落ちる」を地でいく寅さんの慌ただしくも大雑把な日常がここにある。

「さくら、やっぱり俺には“地道な暮らし”は無理だったよ」
「うん。」
「でもよ、今回ばかりはよ、おにいちゃん地道に暮らせると思ったよ」
「うん。」
この最後の寅さんと桜のやりとり。
そして、最後の最後の
「お控えなすって」
の寅さんと登のやりとり。

この「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎、人呼んで風天の寅と発します。」の寅さんの“どうせオイラはヤクザな兄貴、わかっちゃいるんだ妹よ”の不変的な人間性を体現したオチ。

どこへ行ってもトラブルメイカーで、何でもやってくれてるようで何もやっていないようで、頼り甲斐があるようでないようで、何でも良いとか言って何でも良くない。

得てして結果的にありがた迷惑な気遣いになり、周りに促され、何かに感化されて心を入れ替えてみれば傷付く。それでまた振り出しに戻る。

この定番のストーリーラインと、寅さんの珍道中にすっかりハマった。

おいちゃんの「おれぁ、しらねぇぞぉ」の出てくるあたりの雰囲気がめちゃくちゃ好き。

本当に「言わんこっちゃない」の展開にズルズルなっていってしまうけど、当の寅さん本人は最後の最後までまったく気付かない鈍感さに毎回毎回噴き出さずにはいられない面白さ。

周りは茶化したり、バカにはするけど、かと言って彼の生き様は誰にでもできるわけでもない。

これが松竹が誇る不朽の名作シリーズと呼ばれる伝家の宝刀の切れ味。

「大したもんだよ、カエルのしょんべん。見上げたもんだよ、屋根屋のふんどし。」ってか。


F:1736
M:2235
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