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男たちの挽歌のhasseのレビュー・感想・評価

男たちの挽歌(1986年製作の映画)
4.0
演出4
演技5
脚本5
音楽3
撮影4
照明3
インプレッション4

ホーにとって親友マークは捨てた極道の過去へのいざないであり、弟キットは堅気の生活、第二の人生への展望である。はじめは、頑なに過去を切り捨て、新たな生活を手にいれようとするホー。しかし、キットに拒絶され、マークに説得され、次第に心境の変化が訪れる。過去を切り捨てるのではなく、過去を清算したうえで未来に向かわなければならないのだと。

ホーの心境の移ろいと、それを阻むようにじわじわと迫り来る新組長シンの魔の手が物語を推し進めていく構成力は見事だが、それを支えるマークとキットの役割も素晴らしい。

特筆すべきはマークのキャラクターだ。マークは、極道をすっぱり辞めて未来に向かうホーとの対比もあり、一見、過去に囚われがちな人物のように思える。若手時代の失敗を昨日のことのように覚えていたり、シンを殺してホーと二人で権力を取り戻そうとしたり。
だが、マークは過去に縛られながらも、未来に進むためには過去に目を背けるのではなく、過去にケジメをつけなければならないことを知っている。マークはそれを覚悟と呼んだ。マークは覚悟がホーにないと糾弾し、親友の進むべき道を示してやるのだ。
マークを演じるチョウ・ユンファの演技がよい。スタイリッシュな身のこなしの内側に、ギラギラ、ドロドロとした溶けた鉄の塊のような思いが沈殿し、いまにも吹き上がりそうだ。それが爆発するのが三度にわたる銃撃シーン(ホーを嵌めた連中への復讐、テープを盗んだ後の逃走、ラストのシンたちとの攻防)。
ホーには未来への道を示しながらも、彼自信は最後に香港から脱出するボートを引き返してホーたちを助けに特攻し、散るのが、過去を捨てきれなかった彼らしいとも言える。
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