三四郎

巨星ジーグフェルドの三四郎のレビュー・感想・評価

巨星ジーグフェルド(1936年製作の映画)
3.2
MGMの豪華絢爛映画!
女、女、女、そして歯の浮くセリフを微笑しながらサラリと言ってのける。
親友がスカウトした踊子を横取りしまくり、それにどんだけ破産してるんだ…ジーグフェルド!「美」を追求する男はなんでもありだな。

中年紳士となったジーグフェルドが妻となる若い娘ビリー・バーク(マーナ・ロイ)にプロポーズするシーンはなかなか良かった。事実はどうか知らないが…、好感が持てた。
真実に恋した女性には、瞳を見て愛の言葉を囁けなかったのかジーグフェルド!爾も普通の男だったかジーグフェルド!
「向こうにまたボートが走っている。見ながら聴いてくれないか?」「ボートを見ながら聴くの?」「そうだ。恥ずかしいからね」「あのプレイボーイに恥ずかしいことなんてあるの?」「君の前ではまるで子供になった気分だ」「わかったわ」「愛してるビリー。ボートを見てッ。僕は無力だ。君にあげられるものは何もない。君は自分の力で栄光を手に入れた、尊敬するよ…オッと、ボートを見てッ。君はすでに大スターだ。僕があげられるものはひとつしかない。愛だけだ」
相変わらずキザだが、この映画におけるキザな科白の数々…、なかなかどうして嫌いじゃない笑
プロポーズに応えるビリー・バークの科白からもその後の賢夫人ぶりがわかるが、この映画を制作した当時もハリウッドにいたわけだから、そりゃぁ良く描くに決まってるよなぁ。ただ本当によくできた若奥さんだ。

アンナ・ヘルド役のルイーゼ・ライナーがこの映画でアカデミー主演女優賞を獲り、翌年も『大地』(1937年)でドイツ語訛りがひどいながらアカデミー主演女優賞を獲得した。この2年連続の受賞は「オスカー史の謎」と言われているそうだが、果たして謎だろうか。どう考えても彼女がドイツ系ユダヤ人であったことが、2年連続受賞の一番の理由と思える。
ハリウッドの大手映画会社は、RKO以外はユダヤ人が創設しトップの座にいたわけで、アメリカ社会の中では、いち早く、ユダヤ人を迫害するナチスドイツを「敵」として捉えていたのだから。ナチスドイツへの対抗意識からドイツ系ユダヤ人の女優にアカデミー主演女優賞を獲らせたのは当然と言えないだろうか。いくら投票といっても、裏工作があったのではないかと疑ってしまう。しかも、MGMはハリウッドの大手映画会社の中でも、全てにおいて最高の映画会社で、スターも、お金も、権力も持っていたのだから。
真実は勿論わからないが、特に演技が上手いわけでもなく美人でもないこのルイーゼ・ライナー…、その後のキャリアを考えると可哀想な女優に思える。
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