記録。
「彼らは命の尊さに気づくでしょうか?」
タイトルから容易に察せられるはずなので深くは触れないが、昭和末期の東京綾瀬で発生した少年犯罪をモチーフにしたフィクション。
発表当時、某巨大匿名掲示板を中心に非難が殺到し、これを発端として劇場公開を中止する事態に至った曰く付きの作品だ。
色々な意見はあると思うが、個人的には凄惨な事件を元に作品を創ること自体には否定的にはなれない。当然、遺族への配慮や了解を得る必要があるという前提の元ではあるが、風化させないためという月並みな願いと、洋邦問わず実際の事件を元にした幾多の名作の存在を捨て置けないからだ。
従って、本作を低く評価した理由は不謹慎だとかそういう理由ではない。単純に作品としてのクオリティが高くないと同時に、制作に際してあって然るべき志が全く見て取れなかったからだ。
映画の内容よりも興味深いのは、互いに顔も名前も知らない匿名の群衆が一つの作品を封印に追いやったという事実。正しいか否かは別として、恐らく当人たちには善意があったはずだ。
これが悪意に変わるとどうなるかが証明されてしまった昨今、加害者になってしまうハードルは昭和末期の比では無い程に低いという事を恐れるべきだろう。