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私は泣かないの一のレビュー・感想・評価

私は泣かない(1966年製作の映画)
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良い。家城巳代治『姉妹』を観たときに「これは日本版『アラバマ物語』では」と思ったのだが、非行少女・和泉雅子の成長(更生)物語が難病ものと絡んで法廷劇に展開し、そして如何ともし難い現実の苦さに収斂する本作もまた「『アラバマ物語』じゃん」と思わずにはいられない。序盤の和泉のヤサグレ演技が魅力的なだけに、それが小児マヒ男児との“おねショタ”的触れ合いによってどんどん削がれていくのは悩ましい(逆に言えば“おねショタ”好きは必見なのである)。撮影の姫田眞左久が「吉田憲二さんって真面目な人であんまりエピソードってものがないんですね」と著書で語っているように、映画自体も大変真面目なのだった。しかし石森史郎+吉田監督による脚本、グッドガールと化した和泉が終盤に見せるちょっとした表情や身体にフォーカスした演出は見事に泣かせる。好きだった人たちとすべからく別れていくのは、好き合っているのに浜田光夫と別れる『非行少女』にも近い。ただ、障碍者のための運動に目的を見出だしたのかと思いきや普通に電気工場に就職するのは腑に落ちなくない?ほとんど喋らない下條正巳は遺影でまで素晴らしい顔。
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