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張込みのryotaのネタバレレビュー・内容・結末

張込み(1958年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

たまには邦画の名作みたいなのが観たくて、未見だったこちらの作品を鑑賞。これがなかなかの見応えでした。松本清張ってすごいんだねやっぱり。それを脚本に綺麗に落とし込んだ橋本忍先生も素晴らしい。

主犯ではなく共犯の男を探すために、おそらく会いにいくであろう元妻を張り込むため、佐賀県の旅館(元妻の家の向かいにある)でずっと様子を伺う話です。張り込みの緊張感と同時に、一週間くらいずっと同じ部屋から同じ人を監視してると、生活スタイルや知らない人なのに心情なんかもわかってくるわけで、これがまず良かったです。旅館の人たちもいい感じに絡むし、何よりさだこ(元妻ね)の毎日がなんの楽しさも希望もない哀れとも言えるところが切ないです。昭和の生活をじっくりと垣間見れる楽しさと相まって、よくできた作品だなと思いました。犯人を逮捕するのが話の中心というより、ようやく犯人と出会えて駆け落ち同然に温泉宿に逃避行する彼女がこれまた切なくて、ようやく生きてる実感みたいなものを得られたのに、犯人は刑事に逮捕されてしまって、夢のように希望が消えていくあのシーン、切なすぎます。彼女はまたあの生活に戻るんだなと思うとなんとも言えず。。結局彼女が主人公とも言える映画なわけで、切なく悲しい話でしたね。

SLシーンたくさん出てくるし、東京も佐賀もあの時代の風景が満載で素敵です。白黒映画なのは仕方ないけど、カラーで残せてたらなあって思います。松本清張シリーズ、たまには見るといいですね。
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