からゆきさんの話である。明治時代、日本は生糸ぐらいしか輸出するものはなかった。それでは、女性を性奴隷として輸出しようということになり、多くの日本人女性が東南アジアに売られていったわけである。まあ、こういう悲惨な状況でも、人間ってやつは逞しく生きていくもんだ、ということを描きたかったのであろうか。バイタリティというやつだな。
そうした歴史を主人公、村岡伊平治を通して描くわけだ。
ただ、それは明治時代までのこと。日本は工業化し、性奴隷を輸出しなくてもよくなった。それどころか、対外的にあまり評判がよくないので禁止した。
さらに、外国では、日本に対する排斥運動も起きていた。
ということで、村岡伊平治の売春事業も立ちいかなくなり、人手に渡った。
それから何十年も経って村岡伊平治もじいさんになったころ、日本軍が東南アジアに攻めてきた。村岡伊平治は大喜びするのであった。
冒頭は、村岡伊平治が仲間二人ぐらいと泳いでくるところから。香港だろうか。そういうところに上陸する。まさに裸一貫である。
とりあえず、大日本領事館へ。床屋の従業員になるのだった。
さらに、上原大尉に雇われて、上原大尉とともに、満州にスパイとして潜入する。村岡伊平治は、上原大尉と行動を共にするうちに国粋主義に染まり出していく。大日本帝国万歳! というやつだ。
村岡伊平治は、ひょんなことから、幼馴染で、いとしい、しほが、シンガポールにいることを知る。
大金を手にして、香港に舞い戻った村岡伊平治は、売られてしまった、しほを買い戻した。しほと一緒になるのであった。
さらに、海賊にさらわれた多くの日本人女性を救い出した。
ただ、救いだしたものの、どうしようということである。そうだ、これだけ、女性がいるのなら、女郎屋を開こう、ということになる。
そこで、一帯の権力者である王と交渉して、女郎屋を開く許可を得た。
村岡伊平治は、日本から女性を連れてきて、女郎屋で働かせ、儲かれば、日本に送金した。まさにお国のため、である。さらに、東南アジアへと女郎屋を拡大していった。
だが、だんだん、日本から女性を連れ出すことは難しくなり、ついには、娼妓取締規則だろうか、禁止されるようになった。
また、日本人排斥運動も起こった。
村岡伊平治の女郎屋は立ちいかなくなり、事業を王に売り渡した。ついでに、しほも王を選んで出て行った。
ならばと、村岡伊平治はお国のためということで、子作りに励んだが、じじいになって、子作りも絶えた。
じじいになってしまったある日、突然、日本軍が攻め寄せてきた。喜んだ、村岡伊平治は、自転車に乗って、日本軍の後を走って追いかけるのでああった。
歴史の勉強にはなるわな。