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ポーラー・エクスプレスのよーだ育休中のレビュー・感想・評価

ポーラー・エクスプレス(2004年製作の映画)
4.0
クリスマス・イブの夜、サンタを信じられなくなった少年の自宅前に蒸気機関車ポーラー・エクスプレスが停車する。多くの少年少女たちを乗せた列車は、クリスマスの聖地である北極点を目指して出発する。

ーWishing you a very merry Christmas!


◆ If I were you,
ーI would think about climbing on board.

監督Robert Zemeckis × 音楽Alan Silvestriのテッパン巨匠コンビが手掛けたファンタジー作品。合衆国の児童文学作家Chris van Allsburgによる同名の児童書がフルCGアニメーションの技術を用いて映像化されています。

クリスマス・イブの夜更けに突然現れた不思議な蒸気機関車に飛び乗った少年の一晩の冒険を描いたファンタジー。

今作は其のテーマに相応しくクリスマスの雰囲気がたっぷりと詰め込まれています。クリスマス・ソング。トナカイが引くソリに乗ったサンタクロース。プレゼントに美しい鈴の音色。愉快なエルフたちは日本ではあまり馴染みがありませんが、欧米ではポプュラーなクリスマスのモチーフ。

名優Tom Hanksの動きがモーションキャプチャによって作品に取り込まれており、全編フルCG作品ながら動きに違和感がありません。ジェットコースターの様なハラハラドキドキとした列車の旅。煌びやかなイルミネーションに彩られたクリスマスの聖地・北極点。素晴らしい映像に添えられている音楽もやはり一級品です。


◆ It doesn't matter wher they're going.
ーWhat matter is deciding to get on.

原作者は、不思議なボードゲームに巻き込まれた少年少女たちの成長を描く名作『ジュマンジ』や『ザスーラ』を執筆しておられ、本作も事程左様に思春期の少年少女が自らの心を育む様子が描かれています。

斜に構えた中にもあどけなさが残る主人公の男の子には、敢えてでしょうか、作品内での名前がありません。同じ歳の頃の子供達が作品に没入しやすくなる小粋な計らいを感じます。

クリスマスのハッピーな雰囲気の中にあっても、どこか不安感を煽る演出が絶妙な匙加減で散りばめられています。ドキドキの冒険だからという訳ではなく、主人公の心を投影するかのように纏わりつく暗い『疑心』こそがその正体。クリスマスやサンタクロースだけでなく、冒険を共にする友人の発言や提案に対してもいちいち責めるような確認をする少年。そんな彼が冒険の末に手に入れたギフトに心が温まります。

風に飛ばされても不思議な力に引き寄せられるかのように持ち主の元へと舞い戻ってきた往復乗車券。帰り際に車掌が刻印してくれたメッセージこそが、一晩の冒険を経て少年少女たち各々が手に入れたかけがえのないクリスマスの贈り物。金色に輝く乗車券がポケットに仕舞われる際にスーッと消え入る(心に染み入る)ような演出は見事でした。

ド直球のジュブナイル・ムービーでしたが、クリスマスの雰囲気がマッチしていて心温まる良作でした。


ーHappy Holidays!