ブロオー

ポーラー・エクスプレスのブロオーのレビュー・感想・評価

ポーラー・エクスプレス(2004年製作の映画)
4.1
よかった。ファンがいることがよく分かる作品。
主人公があまり多くを語らないタイプで観やすい印象だった。全体的に『銀河鉄道の夜』と『千と千尋の神隠し』と重ねて観ていた。機関車のシーンはただただ素晴らしい。乗るかどうかを迷って乗り込んだら、家の庭に作った雪だるまが手を振って送り出してくれるのは粋ですね。そして乗り込んでチケットないかなとポケットを探ったら往復切符が入っている。銀河鉄道の夜でも全く同じ展開があるのだけど、このときの安心感がこの映画の信じる心そのものとも言える。主人公の後に裕福ではない家庭の子が乗り込んでくるのも銀河鉄道の夜そのまんまで、誰をも分け隔てなく乗せて走ってくれる列車というのが心にくる。主人公の手から離れた切符が色々な動物たちの力を借りてまた主人公の手もとに戻っていくシーンは圧巻。「美味しいココアを作るコツ」っていう歌は公開当時に観てそのまま頭に残っていたのでそれだけでも本当に嬉しかった。また繰り返し流れるメインテーマも素晴らしい。琉球民謡の「てぃんさぐぬ花」の3番に以下の歌詞がある。

夜ゆる走はらす船ふにや
子にぬ方星ふぁぶし見当みあてぃ
我わぬ生なちぇる親うやや
我わぬどぅ見当みあてぃ

夜に出す船は北極星が目印だということだが、北極点を目指すこの機関車も全く同じことで血の中を流れている基本的感覚が共鳴しているような気になる。
後半にあたる北極点に着いてからのパートでは主人公がひとり鈴の音を聴くことができなくて、最後にサンタクロースを信じることを誓った途端に鈴の音が聴こえるようになる。そのあとに主人公がサンタクロースに願った贈り物がその特別な鈴の一つを欲しいというところも美しいし、家に届いたその鈴の音を親は聴くことができず「残念ね壊れているわ」と話し、やがて主人公の妹もその音を聴くことが出来なくなる。だけれど主人公一人は生涯を通して鈴の音を失わなかったというナレーションが本当に感動的だ。それは“子どもの心を失わなかった”なんてものではなく、“信じる心を持ち続ける人であった”からということだろうと解釈しているし、それで完結した。