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大いなる幻影のbluebeanのレビュー・感想・評価

大いなる幻影(1937年製作の映画)
4.0
フランス軍の偵察機のパイロットがドイツで捕虜になる不穏な冒頭ですが、そこで丁重な扱いを受ける意外な展開から始まります。捕虜収容所では、フランス人とドイツ人が信仰を深めます。お互いに職務や愛国心に忠実で、脱獄する側と防ぐ側の攻防はあります。でもそこには民族同士の強い敵対心はありません。さらには、脱獄したフランス人とドイツ人女性の愛情が描かれます。

国家の境界や戦争はただのシステムであって、その中にいる人間たちや自然の大地にとってはまさに幻影に過ぎないという描写は今となっては当たり前ですが、この時代にそれを映画で表現したルノワール監督はすごすぎです。

『西部戦線異状なし』といい本作といい、こんな合理的で冷静な映画が作られつつも、結局は第二次世界大戦に突入していく歴史が悲しいです。
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