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マルホランド・ドライブのmのレビュー・感想・評価

マルホランド・ドライブ(2001年製作の映画)
4.5
どこか捉えどころのない前半から見事に伏線回収を果たし、すっきりとまとめ上げた後半。
虚構の世界をこんな美しく残酷に見せ付ける監督大好きだ。

『ロスト・ハイウェイ』で味をしめたデイヴィッド・リンチ監督。
『ロスト・ハイウェイ』よりは分かり易く作られており、後半に入って散らばっていたパズルのピースが素晴らしくぴったりとハマっていくのに鳥肌が立った。

まずはもう対照的なふたりの美人について書きたい。
ベティを演じたナオミ・ワッツさんのうぶ(頭お花畑)な可愛さ。
リタを演じたローラ・ハリングさんの美しすぎる妖艶さ。
赤い口紅に豊満な体を押し込んだドレス、艶のある黒髪、悶えましたよ本当に。
この対照的なふたりが織り成す、不可解な共同生活。

印象的なシーンが何個かあったので、少しそれについて語りたい。
ひとつは、ベティが受けるオーディション。
セクハラ紛いの男性俳優。
困惑することなく寧ろ情熱的に鼻をくっつけ、キスをするベティ。
直前のリタとの読み合わせにはないその妖艶な演技に、監督が言っているハリウッドの闇を強く感じた。
強要はされていない、けれどそれが演技派という一定の価値観に当てはまる。
あの場にいたすべての人が息を飲んだだろうし、私も惹き込まれてしまった。
それがとても恐ろしく感じてしまった。
そしてこのオーディションが後の真実に直結する。
闇が深い……。

もうひとつ。
クラブ・シレンシオでの出来事。
美しい歌に込められたむごい皮肉。
それを見て感激して泣くベティとリタ。
私も思わず息を飲んだ。
そして痛感させられた事実に頭を殴られたような衝撃を感じた。

後半はベティの心理が滲み出ていて、恐怖を覚える。
ストーリーを単純にしたら誰にでも書けるようなものだと思う。
それを真実か嘘かの境を曖昧にし、またメッセージ性も強く表れている。
そして監督が示したいメッセージ性は偽りなく真実なんだとも感じる。
この上なく素晴らしいと感じた。

小物の使い方もストーリーの中で活きていて、リンチ監督が有名なのが納得できた作品。

ストーリー : ★★★★☆
映像 : ★★★★☆
設定 : ★★★★★
キャスト: ★★★★☆☆
メッセージ性 : ★★★★☆
感情移入・共感 : ★★☆☆☆
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