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バイオハザード IV アフターライフのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.8
 東京・渋谷センター街、ある雨の夜、傘を差しすれ違う人々の中でJ Pop girl(中島美嘉)が突如通行人の首に襲いかかる。T-ウィルス汚染は食い止められず、全世界へ蔓延し、ここ東京でも最初の感染者が発見された。前作から1年後の12月某日。アンブレラ社は本社機能を東京の地下へと移し、巨大地下要塞を築いていた。アルバート・ウェスカー議長(ショーン・ロバーツ)は前作のラスボスだったアイザックス博士(イアン・グレン)を罵倒したが、今度は自分も同じ方法を取り、日夜T-ウィルスの研究を続けていた。ある日、堅牢なはずの巨大要塞の正門が破壊される。アンデッドの仕業かと思いきや、そこにいたのはアリス・アバーナシー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)と無数のクローンだった。アリスとそのクローン達は地下要塞に壊滅的なダメージを与えることに成功する。ウェスカーは地下要塞をあっさり見限りヘリで逃亡。予め仕掛けていた特殊爆弾を爆破し、痕跡さえも消し去る。クローンアリスもろとも、渋谷周辺は地下要塞ごと壊滅した。ウェスカーは勝利を確信するが、オリジナルのアリスは生き延びてヘリの後ろから彼に近付く。アリスはウェスカーを追い詰めるが、彼に血清を打たれ、能力を失ってしまい、そのままヘリが富士山に墜落する。

 記録的ヒットを飛ばした人気シリーズ『バイオハザード』第4弾。1作目の生みの親であるポール・W・S・アンダーソンが監督に復帰。彼はパート2,3で主人公のアリスがT-ウィルスが打ち込まれたことで超人的な特殊能力を身に付けてしまい、アクションの緊張感が失われたことを猛省し、特殊な血清を打ち込まれたアリスの特殊能力をフラットにすることで、アンデッドや無数の外敵達との緊迫感を取り戻す。ここでは最初の原理である人間vsアンデッド(ゾンビ)の図式に立ち返る。1作目では神経ガスの影響でヒロインのアリス自身がそれまでの記憶を失くし、失った記憶のパズルを繋ぎ合わすことで全てのミステリーが解ける形式を用いていたが、今作ではアリスではなく、クレア集団の女団長クレア・レッドフィールド(アリ・ラーター)の記憶を奪還するまでの物語である。まるでタランティーノの『キル・ビル』前後編やジェームズ・マンゴールドの『ウルヴァリン: SAMURAI』のような導入シーンは、パート2,3でこじれてしまった設定をゼロに戻すための時間に他ならない。監督が描きたい物語は、その先にあるヒロインがアラスカにある安息の地「アルカディア」へ向かう物語である。緯度・経度で指定された場所へ向かうがそこにはアルカディアはどこにもなく、地の果てのような光景が拡がっている。

 アリスと記憶を失ったクレアがたどり着いたのは、ロサンザルスにあるシタデル刑務所である。この刑務所内を彷徨い歩く一行に待ち構える試練は、1作目のアンブレラ社の地下研究所「ハイブ」と同工異曲の様相を呈す。生き残ったメンバーは8名。だがヘリコプターに乗れるのは2名。しかも無事に安息の地へ降りられる保証はどこにもない。1作目のような衆人環視システム「レッド・クイーン」の罠は迫ることはないが、この刑務所の周りは無数のアンデッドたちに囲まれている。のっぴきならない状況の中で裏切り者が生まれ、彼らが考えつく手段はもはや1つしかない。1作目でジェームズ・キャメロンの『エイリアン2』にオマージュを捧げたポール・W・S・アンダーソンは今作ではまたしてもジェームズ・キャメロンにオマージュを捧げる。攻撃する際に頭部が二つに割れ、鋭い牙で噛み付いてくるマジニやアジュレのビジュアル造形はまんまエイリアンであり、水中深くに潜る彼らに待ち構える恐怖はキャメロン89年の海洋アクションの名作『アビス』を彷彿とさせる。苦労して安息の地へ辿り着いたはずの生存者たちは、乗り込んだ施設でまたもや恐怖の体験に襲われる。これまで女性キャラクターばかりが前景化するだけだったシリーズにようやくクリス・レッドフィールド(ウェントワース・ミラー)が登場する。堅牢な刑務所から彼がアリスと共に逃げ出す様子は、『プリズン・ブレイク』シリーズの自虐的パロディにも思える。アルバート・ウェスカーの造形は『マトリックス』のネオの劣化コピーのような様相を呈す。心なしかスロー・モーションの使用も前2作より冴え渡る。
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