ぽん

星の旅人たちのぽんのネタバレレビュー・内容・結末

星の旅人たち(2010年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

映画なんて観る人の主観によっていくらでも見え方が変わるので、評価としてこういう言葉使いをしていいのか分からないけど、ここで描かれた巡礼は“本物”に見えた。
サンティアゴ大聖堂の内部を歩く登場人物たちと同じ目線で天井を見上げる。何百年、ここに賛美と祈りがこだましただろうと考えると眩暈がしそうになる。壁のパイプオルガンを横に見ながら正面に進む。十字架につけられたキリスト像。800キロの道のりを、出会った人々と交流を深めながら歩き続け、ひたすら目指したこの場所。旅の終わりに神の前にひれ伏す。
巡礼は人生の縮図。

主演のマーティン・シーンはかつてこの地を孫と共に訪れたのだと言う。その時は休暇が3週間しか取れなかったのでレンタカーで回ったのだとか。でもいつか徒歩で旅したいと願っていて、息子エミリオ・エステヴェスに映画化の話を持ちかけ、紆余曲折の末にこの作品が完成したらしい。
そういう思いが映像に結実しているように見えた。映画のための巡礼ではなくて、巡礼のための映画だったんじゃないかな。

また、これは父と息子の物語でもあるけど、これも本物。旅の途中でそこ此処に現れる亡き息子の幻影をエミリオ自身が演じている。フィクションの向こう側に立ち上るリアルな親子像に、ちょっと震えた。

旅人たちは、それぞれに巡礼の目的を語るけれど、実はそれらは本当の理由ではないし、たぶん理由なんて無くていいのだと思う。何かのために旅をするのではない。ただ、旅をし続ける、それだけなのだと思う。

分け登る麓(ふもと)の道は多けれど 同じ高嶺の月を見るかな
ぽん

ぽん