アキラナウェイ

星の旅人たちのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

星の旅人たち(2010年製作の映画)
4.7
俳優エミリオ・エステヴェスが実父マーティン・シーンを主演に起用し、自ら監督・脚本・製作・出演で制作したロードムービー。

これはじんわり沁みる、良作。
個人的には大好きな作品。

カリフォルニアの眼科医トム・エイヴリー(マーティン・シーン)は、放浪の旅に出たまま疎遠になっていた1人息子ダニエル(エミリオ・エステヴェス)が旅先で亡くなったと聞く。息子の遺体を引き取りにフランスの町サン=ジャンにやって来たトムは、息子のバックパックを背負い、彼が辿る筈だった巡礼の旅に出る—— 。

日本人なら、"お遍路さん"?

ここでいう巡礼の旅とは、キリスト教の聖地であるスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼の事。1,000年以上の歴史を持つ聖地への旅は、年間およそ10万人がフランスからピレネー山脈を越え、スペインに足を踏み入れるという。巡礼者にはパスポートが渡され、辿り着いた各拠点でスタンプを押してもらうというシステム。

旅の序盤のピレネー山脈で嵐に遭って命を落とした息子の遺灰を携え、巡礼の旅に出る父トムの表情は険しい。巡礼の旅に出たとて、それが何になるのだろう。息子が帰ってくる訳でもない。迷いを抱えながらの孤独な旅立ち。

美しい景観の中にダニエルの幻が映る度、胸に込み上げてくるものがある。実の親子による共演だからこそのリアリティが堪らない。

トムは道すがら、3人の巡礼者と旅を共にする事に。オランダ人のヨスト、カナダ人のサラ、アイルランド人の作家ジャック。トムはそんな彼らとも容易に打ち解けようとはしない。

長い長い旅。
バックパックを川に落としたり、
バックパックを盗まれたり…。

必死になってバックパックを追いかけるトム。そりゃそうだよ。そこには息子の遺灰が入っているんだもの。

そして、その長い道のりの果てに。
遂に息子と共に踏破した巡礼の旅。

心を頑なに開かなかったトムの心も雪解けのように開かれていく。4人の旅人達は、やがて友人となる。

自分もまるで旅に出ていたかのような感覚。何だか明日から、清らかな気持ちでまた一歩踏み出せそうになる作品。

父マーティン・シーンの長男がエミリオ・エステヴェス。弟がチャーリー・シーン。どうやら祖父方のファミリーネームがエステヴェスなようで。

エンドロールにて
祖父に捧げる、と。