てつこてつ

星の旅人たちのてつこてつのレビュー・感想・評価

星の旅人たち(2010年製作の映画)
3.2
自分の中でフランスからスペインの古都サンティアゴ・デ・コンポスティーラを結ぶ「巡礼の道」を歩く事は人生のbucket listにあるし、普通に良い映画だとは思う。

でも、同じ巡礼の道を行く人々を描いた2005年に女性監督コリーヌ・セロー撮ったフランス映画「サン・ジャックへの道」が凄く響いた作品だったので、どうしても比較してしまう。ジャケ写の雰囲気も凄く似ているし・・

「サン・ジャックへの道」とは登場人物たちが歩く道程も季節も違うので単純に比較するものでもないが、前者は牧歌的ながらも圧倒的に美しい大自然に魅了され、同時に本作よりも多いの登場人物たちのキャラクター描写が実に見事だった対して対して本作では、疎遠であった息子を巡礼の道の事故で亡くしたアメリカ人の眼科医が息子の遺灰と共に息子が成し遂げることが出来なかったサンティアゴ・デ・コンポスティーラまで連れて行こうとする物語。その道中に、喫煙が目的だと語るちょっと陰があるカナダ人女性、ダイエットが目的だと言う陽気なオランダ人男性、スランプに陥ったアイルランドの男性作家が加わり、結局、4人で巡礼の道を辿る事となる。

あくまでも自分の主観だが、ロードムービーにしては「巡礼の道」の描写が妙にアッサリし過ぎている感。終盤に“サンティアゴ・デ・コンポスティーラまで残り240キロ”の標識が出た次のシーンがいきなりゴール地点ってのは、あまりにもはしょり過ぎ。

主要キャラクター4名の絆の描かれ方もどうにも浅い。そもそも父子の関係性がどうだったのかの説明があまりなされていないので作品のテーマであるべき親子の絆をそれほど感じないし、主人公が道中に息子の幻影を度々見る描写もちょっとしつこい。いかにもアメリカ的な楽曲の使われ方も好きではない。

ヨーロッパにおけるジプシーにおける偏見を作中に入れる作りも、ちょっと説教臭くてアメリカ映画過ぎ。

何よりも息子が命を落としたピレネー山脈を歩かないってのは、流石に無いんじゃないかな?

それでも、「カサンドラ・クロス」でエヴァ・ガードナーの若いツバメ役で初めて見たマーティン・シーンが渋くとても良い年の取り方をしているし、実の息子である80年代の青春スター、エミリオ・エステヴェスが息子役はもとより、監督&脚本を努めているのは作品内で描かれる親子関係よりも遙かに強い絆が感じられて素晴らしい。
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