とうじ

汚れた血のとうじのレビュー・感想・評価

汚れた血(1986年製作の映画)
2.5
岩井俊二に、映画愛と、映画的な引き出しの多さと、審美的なセンスの良さと、語り口の視点の斬新さを与えて、フランス語も喋れるようにしてあげて、カリスマ性の強い役者を四人雇ってあげたけど、作られるものは結局岩井俊二作品であることからは抜け出せなくて残念、みたいな映画。

一言でいうと自惚れてる。自惚れ系の映画監督の極みはゴダールだが、せめて彼の数ある傑作がそうであるように、90分くらいで収めてくれって思った。

そして、ゴダールと比べ物にならない点は、そこではなく、レオスカラックスはなんにも現実と戦っていないというところにある。ということは、何も語るべき物語はないのであり、その状態で2時間の映画を作らなければならなくなって、苦し紛れにセンスの断片をいっぱいぶち込んでミキサーにかけたみたいな映画が本作である。全てを圧倒する形式主義という意味ではウェス・アンダーソンなんかが思い当たるが、あの人は語りたい物語を抑え込むために形式を使っている(物語の密度が濃過ぎて収集がつかなくなりわちゃわちゃした感じになってしまうという彼なりの短所はあるにしても)。

斬新だしセンスもいいし悪くはない映画なのだが、普通に胃もたれした。

でも、近未来のマンションに置いてあるレコードがデッド・ケネディーズだというのは、いくらなんでもセンスが良すぎるということは言っておきたい。あと、ボウイが流れてぶち上がったのはしゃあない。
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