大道幸之丞

電柱小僧の冒険の大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

電柱小僧の冒険(1995年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

塚本晋也事実上のデビュー作。1988年、28才の塚本晋也が8ミリフィルムで撮影した作品。名作『鉄男』とは商業デビュー作品という関係。

『鉄男』は翌年に撮影開始しているので、撮影手法に類似性と既視感がある。予算の少なさをアイディアでカバーし、ストップモーション撮影を駆使している。「兄弟作品」と言ってしまって良いだろう。

塚本作品は低予算である事からのハンドクラフト感が決して「チープ」ではなく「そのような映像表現美学」と受け止められてしまう力量(偶然の可能性は高いにしても)があるのがすごい。それを「感性・才能」と呼ぶのではないか。

いきなり唐突に電柱を背負った少年が主人公だが、その説明(説明しようもないが)もない。木造安アパートと、ガラクタを寄せ集めたビジュアルと不親切なぐらい情報量が欠損した正義と悪の構図、ほんのりエロ。

そして時空を超えた愛の色もあり、本人が好きな円谷プロ作品のヒーロー物のテイストもある。

中編ながら塚本晋也の原点とも言え、『鉄男』〜『ヒルコ』につながる一貫性があり、見ごたえもある。

出演者もかなり『鉄男』とカブっている。石井相互監督初期作品を説明抜きで観る事が出来る方ならハマる作品だ。むしろ海外のインディーズ界隈のほうが理解者が多いかもしれない。

タイムマシンと恋愛は相性がよい事をこの作品でも確認した思いだ。